
雑談力を身につけるメリットは、「リラックスして言葉を受け入れてくれる関係」を築けることにあります。
結果、相手との心の距離もグッと近づきます。
ビジネスパーソンにとっては、強力な「武器」になる。
グーグルで人材開発のリーダーを務めたピョートル・フェリクス・グジバチ氏は…
一流のビジネスマンは、『雑談』を武器としてフル活用することで、仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出すことを強く意識する。
… と述べています。
実際、営業で好成績をあげている社員には雑談力に優れている人が多い。
有益な情報が手に入る、有力な顧客を紹介していただく、新サービスを社内に広報してくれるなど、雑談のメリットは拡大していくからです。
しかし、コロナ自粛期間、対面でのコミュニケーションの場が極度に減りしました。

2021年12月2日「コロナ禍で変わる職場の“集まり方”を調査」 株式会社リクルート
https://www.works-i.com/research/works-report/item/gettogether_research_2.pdf P3 グラフ化
上記のデータが示すとおり…
雑談の機会も同様に減少。
雑談によって「お近づきになった」顧客との距離も離れた感があります。
そこで本記事は、やや錆びつき気味の「雑談力」にスポットを当てて…
話題づくりのポイントを解説
雑談の切り口や返し、ネタ、ビジネスチャンスの生み出し方も盛り込んでいます。
会話例もあるので、雑談が苦手な人には克服のヒントとしてご活用ください。
具体的には以下の項目です…
雑談の話題づくり5つのポイント
雑談は、相手に気持ちよく話してもらうことが基本です。
6~7割は相手にマイクを向けているイメージ。
そして、話を聞くことに注力します。
しかし、雑談に慣れていない人は、提供する話題に不安を感じてしまう。
自分が投げかける話題に対して…
相手は関心を示すか… という不安です。
雑談に備えて話題をちょっと準備しておく、そうすれば不安が軽くなります。
ポイントを5つに整理してお届けします。

❶ 初めて体験
「初めて…」で始まる体験談を指します。
「初めて体験」のやり取りは、短時間で打ちとけたいときに有効です。
体験当時の感情を呼び起こしやすく、素のリアクションを期待できるからです。
結果、雑談が共感の場になる。
初めて使った、行った、見た、聞いた、食べた体験をふり返ったり質問したりします。

自分から話題を提供する場合は…
「この間、初めて○○を使ってみたんですが…」
という導入になります。
相手を「初めて体験」に導くには…
「最近、使ってみてよかった便利グッズはありますか…」
などの質問を投げかけます。
質問の返答に対して相づちを入れながら、さらに質問を重ねると話のラリーが続きます。
例えば…
「へぇー、時間を節約したい人には最適ですね。どうやって見つけたんですか…」
という感じです。
感情を呼び起こしやすい過去の出来事は…
最初・最後・最高・最低の4場面
「最初」=「初めて体験」 以外にも、最後・最高・最低 の話題も「お近づきになる」のに有効です。
「最高」体験をとりあげた場合…
「それ、最高ですね!」
と共感を示すだけで、相手との距離が縮まります。
❷ 笑える自己開示
深刻な打ち明け話ではなく、クスッと笑える自虐ネタを指します。

ソフトバンクグループの孫正義氏は、
かつて【Bloomberg】「不毛な値下げ競争が始まった」との批判に対し…
…と、見事な自虐返しを披露しました。
逆風となる批判を吹き飛ばす凄みを感じます。
そして、大いに笑える。
自虐ネタを「返し」でつかうのは高等テクニックですが…
自分の見た目、立場、日ごろの印象とのギャップを武器にして、やや大げさに表現する。
例えば…
- こわもての人が「実は私、虫が怖くて蚊に刺されると気絶します…」
- 流通業界の人が「実は私、三代続く方向音痴の家系に生まれまして…」
- 物静かな印象の人が「実は私、マイクをもつと安室に変わるんです…」
このような自虐ネタやギャップを雑談中、時機をみて使うと親近感をもたれます。
会話の「つかみ」にも応用できるので、自虐ネタをひとつ持っておくと雑談に対する不安が軽くなります。
❸ 時間軸の質問
過去・現在・未来をつなぐ質問です。

話題に困ったときは、時間軸でさらに雑談を展開できないか、と考えてみましょう。
例えば…
過去 | ヒト | 以前はどうされてたんですか。 |
モノ | 以前は何を使っていたんですか。 | |
コト | 以前はどうだったんですか。 | |
現在 | ヒト | 今は何をされているんですか。 |
モノ | 今は何が主流ですか。 | |
コト | 今はどうなっているんですか。 | |
未来 | ヒト | 今後はどうするおつもりですか。 |
モノ | 今後はどのように進化しますか。 | |
コト | 今後はどうなるのでしょう。 |
時間軸の質問は、情報を引き出す際に使えるとともに、ヒト・モノ・コトのプロセスにふれることによってインスピレーションを得られます。
❹ 有益な話題
雑談相手に有益な情報を提供する。

返報性の法則が働き、自分も「ありがたい」情報を得られます。
ポイントは、日ごろから相手の関心事に意識を向けて接することです。
雑談相手がどんな情報を有益と考えているか、把握しておく。
話題を提供できるように情報源をもっておくことも大切です。
例えば、資産運用に関心がある人に対して…
「2024年は、ハイテク銘柄の上昇がひと段落して、緩やかなリセッションに入るという予想が強いですね。自社への問い合わせ状況から見て、実物資産に注目が集まりつつあります。」
など、許容範囲での自社&他社の情報を提供する。
有益な話題は…
健康・お金・仕事・趣味の4分野
「お金」については慎重さが必要ですが、「ムダの解消」「節約」にまつわる話題はOKです。
無難な話題は、健康に関すること。
「いつもお元気ですね。何か健康の秘訣があるんですか…」
の質問を皮切りに、当たり障りのない内容で雑談を進めることができます。
次に会った時も「○○は続けてますか?」「その後どうですか?」という切り口で質問できます。
※返報性の法則:誰かに何かもしてもらったら「お返し」をしたくなる心理のこと。
❺ 実体験の深掘り
実体験の話題から雑談相手の人物像に迫ります。

実際に行った、見た、聞いた、食べた、使った体験をふり返ったり質問したりします。
「実際のところ…」を知りたいのは、自他ともにある関心事。
例えば…
「実際に○○を利用して、どんなメリットがありましたか…」
などの質問から、「それは便利ですね」と相づちを打ちながら話を展開します。
実体験は、以下のような観点でも感想を引き出すことができます。
- メリットやデメリット
- 楽しいや悲しい
- 安全や危険
- ワクワクや残念
- 便利や不便
- 感動や落胆
- 予想どおりや予想外
- 快適や不快
- 簡単や面倒
深掘りとしては、時間軸の質問をする、実体験に至った経緯や方法を質問するというやり方があります。
打ち解けた雰囲気があったら…
「写真、見せてくれませんか?」と投げかけるのも「お近づきになる」一手。
写真を見た感想をもとに共感を深められます。
続けて…
「○○さんは、常に前向きな方ですね。そのエネルギーはどこから湧いてくるんですか?」
と感想を述べて、雑談相手のコアに迫る質問を展開すれば自然と距離が縮まります。
質問自体が「自分に関心をもってくれている」というメッセージになるからです。
雑談をビジネスチャンスに変える方法

❶ 「雑談したい人」になる
雑談は、相手に気持ちよく話してもらえばOK。
話の中身にこだわる必要はありません。
互いに心地よくなればいい。
しかし、ビジネスチャンスを生み出す機会として雑談を活かす場合、気づきを促し、創造性を刺激する情報を盛り込む必要があります。

ステークホルダーとの間に、共通する関心事が見つかり、「深掘りしたい」という流れの中で落とし込む情報、その有益性の高低で「あなた」個人の印象が変わるからです。
ステークホルダーとの雑談は、その時の関心事が話題になることが多い。
手間をかけずに、世界の動向を広く知る情報源をもつことが必要です。
情報源のおススメは…
- ビジネス情報、金融データ、ニュース、市場分析の提供で世界をリードする:Bloomberg
- レベルの高い経済記事を閲覧できる:日本経済新聞電子版 日経ビジネス電子版
- 国内最大規模の経済ニュースプラットフォーム:News Picks
- 専門性の高いコラムを提供する:Forbes Japan
- プレジデント社が運営する総合情報サイト:プレジデントオンライン
製造業のマーケティング担当者におススメは…
自身の状況やニーズに応じて情報源を選択していきます。例えば…
「Bloomberg」の「【今朝の5本】仕事始めに読んでおきたい厳選ニュース」は短時間で世界の動向がつかめる。
時間のない時には最適の情報源。
Forbes Japanは、各業界の最前線で活躍するプレイヤーを取りあげている。
ネットには転がっていない情報が多いので、新鮮なネタを見つけるには最適。
という具合に、情報源を適宜選択して、有益な情報を吸収しておきます。
雑談相手に、あの人と話すと何かしら得るものがある、刺激を受けると印象づける。
平たくいえば、「雑談したい人」になることが大切。
これがビジネスチャンスを生むファーストステップになります。
ここでは、「パーソナル・ブランディング」の記事で紹介したチャンキングの質問を使うことが有効です。

- 「つまり、こういうことですか?」「つまり、こうなることが目的ですか?」などのチャンクアップの質問。
- 「具体的にはこういうことですか?」「例えば、こうなることですか?」などのチャンクダウンの質問。
チャンクアップの質問は、視野を広げたり問題の核心に迫ったりするのに有効です。
チャンクダウンの質問は、行動の動機づけにつながります。
両者ともインスピレーションを刺激する質問です。
❷ 「無償の行為」を発動する
雑談を進めていく中で顧客との距離が縮まり、「困りごと」を打ち明けられることがあります。
その時に自身のリソースをつかって解決の手助けをします。
例えば、「取引先に○○を取り扱っている会社があります。紹介しますよ…」
など自身のネットワークをつかって解決を手伝う。
自社の利益に結びつかない無償の行為は、「あなた」個人に対する信頼となり、周囲にも広がります。
取引先から「○○さんに頼みたい」と名前指名される存在になれる。
同時に、あなたは「取引相手」からパートナーに昇格します。
結果、仕事のパフォーマンスが上がります。

注意する点は、雑談中、取引にかかわる提案を話のテーブルにのせないこと。
相手が求めない限りは、「実は弊社の商品に…」と持ちかけてはいけません。
雑談を見え透いた誘導と思われ、あざとい印象を植えつけます。
雑談と取引は線引きすることが大切。
親密になれば、プライベートな悩みが話題にのぼります。
子どもの教育や就職、親の介護、退職後や老後の生活などです。
その場合、解決のヒントになる情報だけでも、相手は有益と感じます。
特に、一次情報はありがたく受けとられます。
こちらとしても直接体験から学んだ知識や情報を提供できるので、自信をもって話せる。
注意点は、「一人しゃべり」にならないこと。
相手の情報ニーズに沿って、話のキャッチボールをします。
「心配ですねぇ」「両立はきついですよねぇ」
など共感の相づちも大切。
相手の相談にのる、共感を示しながら悩みの解消に向けて伴走する…
これも無償の行為です。
雑談をビジネスチャンスに変えるコツは、無償の行為の発動。
雑談は、そのきっかけをつくるビジネスツールになります。
雑談を極めたい方におススメの書籍は…
1000人を超えるビジネスパーソンのコーチ:岡本純子さん著作