人事制度の透明性、人材流出防止などを目的として、キャリアパス制度を採用する企業が増えました。
キャリアパスとは、企業側が社員に提示する「希望のポストに就くまでの道筋」のことです。
昇進・昇格に必要な職務経験やスキルなど、基準や条件が明示されています。
しかし、現在は40歳までに約6割が転職経験を有する時代…
人材市場から声がかかるような、需要のあるキャリアパスを自ら描き実践する必要に迫られています。
いわば…
『マイ・キャリアパス』の重要性が高まっている。
求められるキャリアは、人材市場における専門性や経験への需要と供給のバランスに影響されます。
マーケットに需要があれば、あなたのキャリアバリューは高まり、仕事機会が増える。
自身のスキルセットや職務経験に需要がなければ、あなたの市場価値は減退します。
転職を考える場合もマーケットの動向が成否を左右する。
自身の人材市場における価値は現在「いかほどか」というチェックが必要になります。
この人材市場に通じているのが人材紹介業のエージェント、なかでもヘッドハンターです。
ヘッドハンターは企業のオーダーに直接触れる機会が多く、ピックアップされる人材に精通しています。事業動向や募集ポジションの変化も把握している。
では、ヘッドハンターのターゲットには、どんな共通項があるのか?
これを整理すると、市場価値の高いキャリアパスが見えてきます。
そこで、今回はヘッドハンティングを切り口に…
「市場価値を高めるキャリア戦略」を記事にしました。
具体的には、次の5つのステップ
各ステップのポイントは、「市場価値を高めるキャリア戦略のつくり方:5ステップ」の項で解説しています。
簡単に内容を知りたい方は Instagramへどうぞ…
https://www.instagram.com/mitsuya_biz
ヘッドハンティングの領域:ターゲットは「転職潜在層」
ヘッドハンターとは、人材紹介業のエージェントのなかでヘッドハンティング業務を担っている人のこと。
ヘッドハンティングとは、企業で活躍している優秀な人材を引き抜く採用手法のひとつです。
クライアント(企業)の求人依頼を受けて候補者をサーチ、リストにして提出する。
企業側から接触依頼があった候補者にコンタクトをとり縁組を進める
というプロセスを踏みます。
ハンターには、クライアントのオーダーに沿う人物を見極める眼力が求められます。
一般のエージェントは「登録型」、ヘッドハンティングは「サーチ型」と呼ばれます。
企業が「サーチ型」を利用するのは、新規ビジネス立ち上げの際に必要な人材をピンポイントで探すといった『スポット採用』のケースが多い。
ヘッドハンターは、人材紹介会社に登録している人材には基本的に接触しません。
ターゲットは、現在はっきりとした転職希望はないが条件によっては検討しないではない、といった転職潜在層です。
理由は次の「ターゲットの3つの共通項の❶」で解説します。
ヘッドハンターに学ぶ:ターゲットの3つの共通項
❶ 手元の仕事に十全にコミットする人
ヘッドハンターは…
現在転職どころではなく、現職で成果をあげ続けるのに集中している人を優秀と見ます。
仕事に真剣に向き合っている人に目をつける。
そういう人は、自身の役割を自覚し、果たすべき使命を深く理解しています。
なかでも、チームをマネジメントしながら成果を生み出すようなリーダーシップに秀でた人を、希少価値があると見立てをつける。
- チームを率いて成果を出すためには、誰よりも目標がクリアでないといけない。
- 個人の力を最大化し、チームとしての生産性を高めることを求められる。
- 外部や社内各チームとの連携が必要になるため、良質な人脈をつくることが必要。
こういったスキルセットが求められるポジションに就く人は、「まかせてよい」という一定の評価を組織から得ています。
「あの会社のあの人は優秀」という評判が立ちやすく、ハンターの網にかかりやすい。
目指すべきところは…
仕事における存在意義を自ら見出し、手元の仕事に十全にコミットすること
HomeでできないことはAwayでもできません。
まずは社内で、ゴールやアシストを決めることが大切。
ここに集中すれば「評判」を味方につけることができます。
❷ 外的エンプロイアビリティがある人
エンプロイアビリティとは、雇用され得る能力のこと。
詳しくは、厚生労働省「エンプロイアビリティの判断基準等に関する調査研究報告書について」をご参照ください。https://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0712-2.html
エンプロイアビリティのなかでも、環境依存でない応用の利くアビリティを、外的エンプロイアビリティと呼びます。
平たくいえば、汎用的な職能。
ただし、「汎用性」にもトレンド変化があります。
たとえば、営業職。
かつては専門スキルが身につかない職種として敬遠されていた営業職ですが、現在は求人数が約2倍に増加しています。
(2019年と2023年4月比較:doda転職求人倍率データ/職種別)
https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/data/
在籍している企業のプロダクトやサービスを売るスキルは、企業が変わっても応用できる、というマーケットの回答と言えます。
業種を問わず、優秀なセールス人材に顧客層の拡大を期待する側面もある。
営業スキルが外的エンプロイアビリティとして認められ、その優位性が高まっているのです。
具体的には…
- システム導入のために技術的な知見が必要なプリセールス
- 自治体や特定業界に精通した法人営業
- エンタープライズシステムの営業を担える経験豊富な管理職
…などのニーズが高い。
銀行や生保などの法人営業で経験を積んだ人材が、外資系コンサルタント企業へ転職するケースも見られます。
マネジメントスキルにも注目が集まっています。
とくに今は、人材のマネジメント、ピープルマネジメントとプロジェクトのマネジメント、両方のスキルが必要で、どちらも管理できれば企業の枠にとらわれず活躍できる。
このようなトレンド情報を得ると、時流に乗ったキャリアパスを描けます。
トレンド情報を収集するには、マーケットとの対話が必要。
窓口の一つが、キャリア相談サービスです。
希望職種のキャリア専門家に相談し…
- 人材市場における需要を知る。
- 求められるスキルや職務経験を知る。
- 職場のリアリティを聞き、イメージをもつ。
これら3点をもとにキャリアパスを描き、今後の働き方に活かす。
すると、時流を踏まえたキャリアアップが実現します。
キャリア相談サービス利用の入り口としておススメしているのが『coachee(コーチ―)』
公式サイト:coachee
「スポット型」で低価格、そして相談相手を自分で選べるという安心感があります。
下のボタンで詳細記事にとびます…
求められるスキルを確実に獲得したり、質の高い職務経験を積んだりしたい方は、伴走しながらゴールへと導いてくれるサービスがあります。
それがキャリアコーチングです。
具体的なアクションやキャリア設計をあなたに合わせて提案してくれます。
実績のあるキャリアコーチングサービスを紹介しておきます。
以下の記事でも紹介しています。
気軽にできるのは、転職サイトの利用です。
登録することによって、非公開求人まで閲覧できます。
(ほとんどのサイトは、完全無料で登録できる)
- 無料登録をして、求人検索エンジンで案件にふれる。
- エージェントから連絡が入れば、募集ポジションを含め条件の詳細を聞く。
- 採用フィルターの存在と内容を知る。
これらの情報をもとに、自身の働き方を見直していきます。
転職ありきではない「転職サイトの利用」が能率的。
マーケット情報とスカウトされるチャンスの両方が手に入るからです。
複数登録しても問題ありません。
転職サイトには総合型と特化型があります。
- 自身の可能性を限定せず、広く情報を集めたい方は総合型
- 特定の業種・職種を目指す方は、特化型
- 意思が固まっていない場合は、両者を組み合わせて利用
実績のある転職サイトを紹介しておきます。
人材市場における外的エンプロイアビリティの需要をリサーチすると…
将来保障の高いスキルがわかり、努力の方向性が明らかになります。
結果、ゴール到達が短期間で実現する。
➌ 職務履歴をストーリーで語れる人
転職が一般的になった現在、さまざまな業務経験をもつ人も珍しくなくなりました。
それにともない、転職回数が多いと「採用に不利か?」と疑問を抱く人が多い。
そこで、不利にならないケースを紹介するとともに、キャリアパスのあり方について解説します。
外資・ベンチャー系など特定の職種については、転職経験が有利に働きます。
むしろ、35歳までに一度も転職経験がないと不利と言われます。
職務経験の豊かな人材の採用を、「他企業のノウハウを取り込むための投資」と考える企業が多いからです。
それ以外については…
転換点(転職)で「どのようなキャリアを目指したか」が問われます。
そして、転換点が線で結ばれ、職務履歴書をストーリーで語れるかどうか。
職務履歴をストーリー化できる人とは…
キャリアステージをどのように想定して転職を選択したか、
転職先でどのようなキャリアを積み、次は何を目指すかをストーリーで語れる人。
立場を変えると、ハンターが推薦原稿を書きやすい人です。
「レジュメ美人」と言われる人。
仕事上の危機や失敗があっても、それに向き合い対処して学びを得れば、ストーリーになります。学習能力が高く、強靭さを持ちあわせていると評価されるからです。
むしろ、危機に陥った企業に早々に見切りをつけて逃げた、いわゆる泥舟からいち早く逃げ出す形で転職した人には、高い評価を与えません。
人生の転換点での考え方や志向、行動が、その人自身をあらわす。
ハンターが知りたいのは、この転換点の内容です。
職場の人間関係に不満があったから転職した、ではストーリーになりません。
新たなキャリアステージへの挑戦とその軌跡があってこそ、ストーリーになる。
したがって、キャリアパスは…
ふり返ったときに「挑戦の軌跡」になっていることが重要
負の動機からキャリアパスを描こうとしてはいけません。
市場価値を高めるキャリア戦略のつくり方:5ステップ
市場価値の高いキャリアをつくるには…
価値観を軸に目指す将来像を描き、その姿を実現するためにマーケット情報に基づいて、どういった経験・スキルが必要になるかを明らかにする。
それらを獲得できる環境はどこであるか、またどういった方法をとれば可能かといったように逆算していき、キャリア戦略を描くことが必要。
具体的には、以下の手順です。
❶ 自身の将来像を描く
- 価値観のふり返り
- ゴール像の設定
- 人材市場の情報収集
❷ 必要な職務経験・スキルを洗い出す
- 外的エンプロイアビリティの観点
- ポータブルスキルの観点
- 経験やスキルの棚おろし
❸ 仮説=キャリアパスの立案
❹ スキルや職務経験の獲得
- スキル開発行動
- ジョブデザイン行動
- ネットワーキング行動
❺ 定期的なふり返りと見直し
- 障壁の特定
- 環境の適正化
- 方法の修正
❶ 自身の将来像を描く
キャリア戦略の策定は、自分自身への理解が進んでいることが前提になります。
仕事における、あるいは人生における優先価値や条件を明らかにすることからスタート。
ちなみに、転職難民に陥るのは、ここが不安定な人です。
転職エージェントの「このチャンスを逃すと…」という枕詞に転がされてしまうからです。
価値観が最初から明確な人はいません。
対話をとおして、在籍する業界や職種の知見と紐づけながら掘り起こしていきます。
手軽なのは、自己内対話。
- 人生をかけてやりたい仕事は何か?
- 「ここだけはゆずれない」というこだわりや条件は何か?
マインドマップで多様な価値観を書き出すなどして、可視化する方法が有効です。
見返すことにより、人生の転機に選択を誤らない「お守り」になります。
他者との対話は、自分では気づいていない「他人から見た自分」について理解が深まるメリットがあります。
価値観の掘り起こしのプロが、先ほど紹介したキャリア相談サービスになります。
自身の価値観に基づいて次のフェーズの目標を設定、人材市場の情報取集へと進みます。
❷ 必要な職務経験・スキルを洗い出す
ここでは現在の職能と、将来必要な職務経験・スキルとを比較する作業をします。
今の自分の現状をゴールから逆算し、必要な職務経験やスキルを書き出します。
人材市場の価値を高めるために、自分にどんな「タグ」をつけ加えるか検討してください。
大きな目標であればこそ、小さな目標を立て、ひとつずつクリアしていく達成感と自信をつけていくことが大切です。
将来必要な職務経験・スキルを明らかにするには、複数のロールモデルを参考にするのが近道。先人のロードマップが水先案内人になります。
キャリアの棚おろしも必須。
これまでのキャリアのなかで、あなたしかできないことが積みあがっています。
自分では、できて当然と考えることも社会では希少なスキル・経験値であることも多い。
たとえば、連結決算がわかる、危機管理の経験がある、バイカルチャーレベルなどです。
ここでも、職務履歴書に書き出すなど可視化する方法が有効。
「自分はこの間に、これだけ成長した、専門性を磨いた」と見える化する。
見える化すると、不足しているスキルや経験も明らかになります。
環境が変わっても実力を発揮できる点や、再現性の高いスキルを明らかにすることも大切。
外的エンプロイアビリティの観点、ポータブルスキルの観点から必要な能力やスキルを洗い出します。
すると、マイ・キャリアパスがより明らかになります。
※ ポータブルスキルの詳細は、以下の記事を参照されてください。
❸ 仮説=キャリアパスの立案
逆算して導き出した「必要な職務経験やスキル」をたどりながらステージを上げていく…
これがマイキャリアパスになります。
ただし、実際にキャリアパスをたどるときは…
プランに固執せず、次のステージに集中することが重要です。
ゴールまでのプロセスには変更がつきもの。
思いがけない幸運に恵まれることもあれば、強く望んで努力をしても報われない可能性もある、という現実を認識しておく必要があります。
あくまで「仮説」であり、しなやかに対処・対応していく姿勢が大切です。
※ 以下のキャリア論も知識に加えましょう…
『計画的偶発性理論』
ジョン・D・クランボルツ
個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。
その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアをよいものにしていこうという考え方。
❹ スキルや職務経験の獲得
社外にも展開し得る自分のキャリアをどう蓄積していくかということが大切になります。
どれだけ異なる人たちと一緒に働けるか、という視点も必要。
社内異動、他社交流に自ら手を挙げる、という行動が大切になります。
「ジグザグのキャリア」で体得した能力やスキルが「環境変化に対応できる汎用性・再現性のある能力」となり、ポータブルスキルにつながります。
人脈も広がる。
そのほか、スキル開発行動・ジョブデザイン行動・ネットワーキング行動の3つの行動が大切になります。
これら「3つの行動」の詳細については、『輝く社員と色あせる社員の分かれ道』の記事で詳細を解説していますので、参照されてください。
❺ 定期的なふり返りと見直し
ふり返りで、まず大切なことは、獲得した自分の強みを知ることです。
手軽にできることは、自分を高く評価する人に聞くという方法。
もう一つは、ポータブルスキルの観点でふり返りを行う方法です。
厚生労働省の「ポータブルスキル見える化ツール」を活用するのも一つの手です。
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/VocationalAbilityDiagnosticTool/Step1
先ほど紹介した「職務履歴書に書き出すなど可視化する」ことも有効。
履歴書をもとに、今後どうアップデートするかを明らかにします。
同じことを繰り返しているとわかったら、他のスキル取得を目指す、環境を変えることも視野に入れる。
ここに来て「転職」が選択肢に入ってきます。
以上、「市場価値を高めるキャリア戦略」を解説しました。
パンデミックの発生、紛争の勃発、ハイパーインフレなど、リスク時代を生きる若い世代は将来への不安がストレスになっているように思います。
AI技術の発展も、仕事や採用に益をもたらすか負の影響をもたらすかは、まだ不透明。
本記事が少しでも不安の軽減に役立ちましたら幸いです。
市場価値を高めるためにスキルアップしたいは、スキルトレーニングの受講が早道。
オンラインで受講できる「コミュトレ」は、営業成績向上で年収アップ、転職の実現などの実績があり、おススメです。
今回の記事執筆にあたり…
小林 毅 様のYouTube動画『キャリアホライズンチャンネル』より多く知見を得ました。https://www.youtube.com/@career-horizon
有益な情報公開に対する敬意と感謝の意を表すとともに、小林様の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。