やる気が起きない、人と話すのが億劫になった…
この症状、燃え尽き症候群:バーンアウトの疑いアリです。
※ 燃え尽き症候群:バーンアウト
https://icd.who.int/browse/2024-01/mms/en#129180281
「Future Forum Pulse」の最新リポートでは、次のとおり、従業員の 42% が燃え尽き症候群を報告しています。
フューチャー フォーラム パルス 2022 年 11 月 16 日から 12 月 22 日まで実施
https://futureforum.com/research/future-forum-pulse-winter-2022-2023-snapshot/
燃え尽きを訴える人は、世界的に増加傾向。
仕事量が自分の受け入れ能力を上回る状態が続くと、不安やストレス、さらには燃え尽きといった症状につながりかねません
そこで重要になるのが、過重な仕事の依頼に「ノー」と言えること。
相手に「ノー」を言う技術は、自分のキャリアを守るための重要なスキルです。
そこで本記事では…
「ノー」と言う技術を解説!
具体的には、次の3ステップです。
- 「ノー」の境界線をつくる
- 境界線を周囲に知らせる
- 「ノー」の伝え方をマスターする
STEP1 「ノー」の境界線をつくる
燃え尽き症候群の一因とされるのは、仕事と自分時間の境界線があいまいであること。
仕事と自分時間の境界線があいまいになると、仕事に対するストレスが自分時間にも影響を及ぼし、リラックスできなくなります。
まずは、仕事と自分時間の境界線を引くことから始めましょう。
仕事と健康のバランスをとる
自分としてはもう限界…
しかし、次から次に仕事を押しつけられ、引き受けてしまうことはありませんか?
限界を超える仕事に対して、「ノー」と境界線を引くことは、自分勝手な行為ではありません。
自分を守るために必要なアクションなのです。
だれにも共通するのが
心身の健康にかかわる境界線
相手の要求を飲んでしてきたことが、徐々に負担になり、心身をむしばむ。
加齢とともに無理がきかなくなり、気がついたら病院のベッドの上という話をよく耳にします。
実は、筆者もその一人…
原因は、限度の境界線があやふやだったことです。
大切なのは、自分の心身の許容範囲を把握しておくこと。
相手の要求に対して、
- どこまでならストレスなく対応できるか
- どれ以上だとストレスに感じてしまうのか
- 体力的にどこまで可能か
…というように、自分にできること・できないことを区別する基準をもつことが大切。
自身の限界について基準をもつことは、人生の基盤である「心身の健康」を守ることにつながります。
基準を定める目安は、睡眠の量と質。
可視化でき、確認しやすいからです。
睡眠の量と質で境界線を引く
抑うつは睡眠時間との関連性が深いと言われています。
睡眠時間が短くなると気持ちが沈み、夜ふかしをしがちになるという悪循環に陥りがち。
精神科医・医学博士の西多昌規氏は、睡眠の重要性を次のように述べています。
かつて短時間睡眠法がもてはやされましたが、今の時代、寝る時間を削って仕事をしようと考える時点ですでに敗北者です。
「無理な依頼はスルー、『6時間睡眠』を確保する」PRESIDENT 2015年2月2日号
https://president.jp/articles/-/15007
睡眠の量と質は、モニタリングで数値化できるので、境界線の目安にしやすい。
筆者がおススメする方法は、バンド型のスマート・ウォッチの活用。
スマートバンドを使えば、睡眠時間や睡眠の質を数値で確認することができます。
他のデバイスよりも就寝時の装着に抵抗を感じにくく、習慣化しやすい。
以下の記事で詳細を解説しています。
ご参照ください。
仕事の負担やストレスが高まると、睡眠の量や質が低下しやすくなります。
一般的には6時間以上8時間未満の睡眠が適切と言われますが、個人差があります。
モニタリングすることで、
- 自分に合った睡眠時間を見つけ、退社時間をルール化する。
- 質のよい睡眠がとれているか確認し、心身をリラックスさせる工夫を生活にとり入れる。
…など、働き方の改善やストレス管理を進めていきましょう。
なかでも重要なのは、退社時間のルール化です。
退社時間をルール化する
退社時間のルール化とは…
退社時間に、自ら境界線を引くこと
まずは、働く時間に制限を設け、生産性を上げることからスタート。
以下の記事で解説した「段取り力」を高めることも一案です。
Slack の「Workforce Index 2023」によると…
「義務感から残業をしている従業員は、定められた勤務時間で仕事を終える従業員に比べて、生産性スコアが 20% 低い」ことがわかりました。
加えて、以下のような違いもみられています。
義務感から残業する従業員は…
- 仕事関連のストレスが 2.1 倍多い
- 仕事環境全般に対する満足度が 1.7 倍低い
- 燃え尽き症候群になる可能性が 2倍高い
義務感からではなく、自分の意思で退社時間を線引きする習慣をもつことは、仕事のストレスから自分を守ることにつながります。
さらには、仕事の生産性や満足度も高まる。
周りが残っているから…に流されず、
限られた時間で、最善の結果を出す。
そのうえで、無理な仕事に対して「ノー」と境界線を引き、職場を後にしましょう。
この点については、「タイムマネジメント」がヒントになります。
詳細は、以下の記事をご参照ください。
悩みどころは、いつも定時に退社というわけにはいかないことです。
繁忙期や緊急事態もある。
おススメは、退社時間の線引きをハードとソフトに分ける方法。
たとえば、退社後に予定や約束がある場合は、退社時間を厳密に守る。
それ以外については、退社時間に1時間の幅をもたせる、などです。
メリハリをもたせて24時間をデザインするという意識をもち、
- ハード:絶対に譲れない一線
- ソフト:時間猶予のある線
…を使い分けることで実現しやすくなります。
Step2 境界線を周囲に知らせる
「ムリ」を周囲に伝え、堅持する
ハードな線引きの場合は、「今日は定時で帰ります」と事前に伝えることが大切。
これにより、追加の仕事を頼まれることもなくなり、スムーズに定時で帰ることができます。
とくに、家事や育児・介護などの家庭内のケアを担う場合は、関係者に明確に伝えるべきです。
自分にとっての境界線がどこにあるかを伝えるだけでなく、その理由も説明しましょう。
周囲の誤解を避けることができ、人間関係を保つことができます。
注意点は、退社時間を周囲に伝えたら、必ずその時間に退社すること。
退社時間を伝えておきながら残業してしまうと、周囲の信用を失ったり、仕事の効率が悪いと思われたりする恐れがあります。
カギは時間内・高集中のワークスタイル
問題は、残業が当たり前という風潮の会社。
- 上司や先輩が働いていると、定時退社しにくい雰囲気がある
- 残業をして、夜遅くまで仕事をしている社員が優秀と評価される
- 定時に帰る人は柔軟性や協力性がなく、周囲への配慮に欠けるとみられる
このような職場で定時退社をするためには、仕事の進捗や成果を定期的に報告し、周囲に自分の仕事の状況や貢献度を知ってもらうことが大切。
定時退社に対する信頼感や評価を高め、自分が「ここまで」と決めた時間には退社する姿勢を周囲に示す。
常日頃の…
- 効果的に周囲とコミュニケーションをとり、業務を円滑に進める
- プロジェクトの成功に向けて、創造的かつ効率的な解決策を見つけ出す
- 限られた時間の中で優先順位をつけ、効率的にタスクをこなす
といった業務遂行能力を高めることで、自身のルールを周囲に認めさせることができます。
カギを握るのは、時間内、高集中のワークスタイルの確立。
言葉だけではなく、自身の働き方をもって認めさせるほうが、長期的なウェルビーイングやキャリアの成功につながります。
STEP3 「ノー」の伝え方をマスターする
小さな「ノー」から始める
私たちは、「ノー」と言うことで生じる気まずさを避ける傾向があります。
コーネル大学のバネッサ・ボーンズ博士(組織行動学)は、次のように述べています。
要求を拒否すると、相手を怒らせる危険があります。これは本質的な社会規範の違反であり、最終的には双方を当惑させることになります。
COSMOPOLITAN ”You Have More Influence Over People Than You Think
その結果、多くの人は、単に『ノー』ということによる大きな不快感を避けるためだけに、自分がしたくないことであっても、同意してしまうのです。
https://www.cosmopolitan.com/health-fitness/news/a56475/you-have-more-influence-over-people-than-you-think/
「ノー」と言い難いのは、人類共通の傾向。
断った後の人間関係が不安だったり、人を落胆させたくなかったり、衝突を避けたいと感じる人は、小さな「ノー」から始めましょう。
小さな「ノー」とは、
あまり緊迫していない状況で「ノー」と言うこと
たとえば、セールスの勧誘に「必要ない」と言う。理由を述べず、きっぱりと断るだけでいい。
疑わしいSNSの発信者をブロックする、というのも小さな一歩になる。
友人の誘いに参加できない旨を伝える場合は、
誘ってくれてありがとう。
悪いけど、別の予定があって参加できないんだ…ごめん。
…と謝意をあらわしながら、その場で断る。
断るべきなのに、断れない、断らない…
などの、どっちつかずの態度は、お互いに心の重荷になるだけです。
返事をはぐらかしたり、言い訳をつくろったり、先延ばしにしたりすることもやめる。
自身にとっても後味が悪く、相手に不誠実な印象を与えてしまうからです。
決断できずにグズグズしてしまうクセ。
これもきれいさっぱり捨て、本当のことを言う練習から始めましょう。
練習をとおして、ひとつでも自分の意思で抵抗する経験を増やす。
大切なのは、あまり緊迫していない状況を利用して、感じよく、正直に断る練習を積むことです。
大切なのは優先事項と代替案の意識
「ノー」と言えずに後悔するのは、自分の最優先事項がわかっていないときに起こりやすい。
大切なのは、常日頃から現在の自分の優先事項を明らかにしておくこと。
最優先事項がはっきりしていれば、即座に、
3日後に、企画審査があります。
現在、企画書の最終とりまとめの段階です。
この企画が通りましたら
ご依頼のタスクに取りかかります。
…など、断ることができます。
同僚からの依頼を断る際も、優先事項を理解してもらうことが大切。
相手に自分の優先事項を説明し、そのタスクをうまくこなす上での障害を理解してもらう。
このことは、同僚に現在の状況をわかってもらえるうえで、自身のメリットになることも多い。
TO DO LIST、〆切を記入したカレンダー、出張や面会の予定など可視化することで、優先すべきタスクを意識することができます。
断る際に、
ご覧のとおり…
…と利用することもできる。
上司から依頼される仕事に関しては、代替案を提示して、「ノー」というのが基本。
先の例でいえば、「この企画が通りましたら、ご依頼のタスクに取りかかります」が代替案にあたります。
別の時期、方法、適任者を添えるなどの、代替案を提案して断ることが大切。
タスクを終わらせる別の方法を提案すれば、自分のためにも、上司のためにもなります。
ポイントは、解決方法に焦点を当てること。
このことにより、前向き姿勢をアピールすることができます。
理由を言いにくいときは「所用のため…」「諸事情により…」
「家庭の事情で…」と言うと妙な詮索をされそう…
「体調が悪くて…」と言えば余計な想像をされる…
両者ともに、後を引く断り方になる。
理由をありのままに伝えると、ときに自分自身を追い詰める場合もあります。
言いづらいことを伝えるときは…
今回は所用のため参加できませんが
次回またお誘いください。
諸事情により
今回のイベントの主催を
辞退させていただきます。
と理由をあいまいにしながら、断りましょう。
「くわしく理由は言えませんが」という意味を含む玉虫色の表現ですが、けっしてウソをついているわけではありません。
理由をあいまいにしているだけなので、お互いに嫌な気持ちにもならない。
ただし、これらの言葉を多用するのはおススメしません。
頻繁に用いると「何か隠しているのでは?」など、相手に懸念を抱かせることがあります。
あくまで理由を言いづらい、言う必要がないときにご使用ください。
「ノー」のオプションを使いこなす
さまざまな「ノー」を適切に使い分けることで、相手との良好な関係を維持しながら、自分の時間やリソースを守ることが可能になります。
以下に、具体的な「ノー」の型を5つに整理して紹介します。
➊ 直接的に「ノー」
明確で率直な断り方です。
この方法は、時間がないときや、断る意志を強く示したい場合に有効です。
たとえば、不要なセールスや明らかに受け入れられない提案に対して使います。
この型は、自分の立場や身を守るために役立ちます。
➋ 理由を添えて「ノー」
断る理由を伝えることで、相手に対する配慮を示します。
これにより、相手は断られた理由を理解し、受け入れやすくなります。
たとえば、仕事の依頼を断る際に…
「現在のプロジェクトに集中しているため、新しい仕事を引き受けることができません」と伝えることができます。
➌ 代替案を添えて「ノー」
協力的な姿勢を示しながら断る方法です。
この型は、相手の要求を完全に拒否するのではなく、別の解決策を提案することで、関係を維持しつつ、自分の都合も伝えることができます。
たとえば…
「今週は無理ですが、来週ならお手伝いできます」と提案するなどです。
➌ 遅延させて「ノー」
即座に断ることが難しい場合に使います。
この型は、追加の情報が必要な場合や、よりよい決断を下すための時間がほしいときに有効です。
たとえば…
「その提案については、チームと相談した後で回答します」と伝えることで、「イエス」が困難なことをにおわせながら時間をかせぐことができます。
ただし、相手を不必要に待たせると、フラストレーションを引き起こす恐れがあります。
具体的な期日を設定し、その期日までには確実に回答することを約束しましょう。
これにより、相手もあなたの回答を待つ際の不確実性を減らすことができます。
➎ 感謝を交えて「ノー」
相手の提案や要求に感謝や評価を示しつつ、自分の状況を説明する方法です。
この型は、相手に対する敬意を保ちながら、自分の限界や能力を伝えるのに役立ちます。
たとえば…
「ご紹介いただき、ありがとうございます。魅力的イベントですが、今は他の優先事項があるため、参加できません」 と伝えることができます。
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