ポータブルスキルとは…
JHR(人材サービス産業協議会 https://j-hr.or.jp/ )が、年齢にとらわれない転職を実現するツール「ミドルマッチフレーム」の中で紹介された、「社外でも通用する能力」のこと。
「ミドルマッチフレーム」とは、JHRが開発したミドル層の転職支援ツールのことです。
※ このツールが政策として検討された背景については、前記事で説明しています。ご参照ください。
このツールは…
ミドルだからこそ培われている「仕事のし方」や「人との関わり方」といったポータブルな能力を可視化し、適切に評価することによって、異なる産業・職業への転職を支援する。
という目的で開発されました。
この目的を現職の立場からとらえなおすと、「不確実性が増す中、早い段階からポータブルスキルを意識して働くことが将来の保険になります」ということです。
つまり、ポータブルスキルを意識して働くことは、自身のリスク管理を行うことと同義。以上のことから言えることは…
ポータブルスキルは、ビジネスパーソンにとって、生涯活躍し続けるための資質・能力であり、その認識をもって自身の働き方を顧みたり展望したりする必要がある
ということです。
「ミドルマッチフレーム」の全体像の中で示された「ポータブルスキル」の能力は以下のとおりです。
出典: JHR 人材サービス企業向けミドル層の転職支援ツール「ミドルマッチフレーム」展開のお知らせ https://j-hr.or.jp/newsrelease/942/
さらに、テクニカルスキルとして「専門知識・技能」、汎用スキルとして「仕事のし方」「人との関わり方」に分けることができます。
全体像は、以下のとおりです。
英語力や経理の知識など、専門知識・技能にもポータブルスキルはありますが、それらは日々社内で活用されていると思います。
本記事では、この専門性以外の…
「仕事のし方」を取りあげて解説いたします。
※「人との関わり方」は、次回記事にて解説いたします。
こんな方に役立ちます…
- ポータブルスキルを高めるための努力点を知りたい
- 今からポータブルスキルを意識した働き方をしたい
- 将来に備えてポータブルスキルの知識を得たい
「仕事のし方」について
❶ 課題を明らかにする能力
「課題を明らかにする能力」とは、以下の2点を指します…
- 取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方
- 事業、商品、組織、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方
そこで、以下の順序で具体例を挙げながら解説します。
- リサーチとターゲット設定
- ターゲットに働きかける要素の設定
1 リサーチとターゲット設定
❶ リサーチ
自社を取り巻く環境や立ち位置を明確にすることで、課題が明らかになります。
「リサーチ」では、様々な分析方法を知り、必要に応じて活用する能力が求められます。
具体的には、経営戦略の策定上、必要に応じてフレームワーク(PEST・PPT・5フォース・3C・SWOT各分析等)を取り入れるなどして、可視化する能力です。
よく使われるフレームワークを2例紹介します。
3C分析の例
クロスSWOT分析の例
また、「真因を正確に特定できる力」なども、これにあたります。
上記の例でいえば、関連データを収集・分析し、「アクティブユーザーの増減」という真因を図解化によって突き止めています。
さらに、この真因が「どのようにして起きたのか、なぜ起きたのか、何と関係があるのか、どうすべきか」など、今後の事業展開を明らかにする能力も求められます。
実際はその適否をチームで検討しますが…
個人で課題を明確にし、課題解決の見通しを立てるなどの経験値を上げることが大切になります。
❷ ターゲットの特定
ターゲットの特定は、STPという3ステップに分かれます。
競合との違いをより明らかにするためにポジションマップを作るなども、重要なスキルです。
2 ターゲットに働きかける要素の設定
ターゲットが決まったら、Product (製品)Price(価格)Place(流通)Promotion(プロモーション)の4Pが、ターゲットに効果的に機能するように組み合わせます。
このように、自社の利益向上や業績の回復などを目指して、「何をすべきか」を図解化によって明確にできるスキルを磨くことが必要。
❷ 計画を立てる能力
「計画を立てる能力」とは…
担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方
を指します。
「業績回復のための販売促進」の例で説明します。
例えば、以下のような大筋を立てたとします…
そして、以下のような一連の道筋を描き、それを実行可能にするための調整等を行うまでが「計画を立てる能力」にあたります。
この力を高めるためには、積極的にプロジェクトに関わり、「どのように進めるべきか」を自身でデザインし、実際に調整にあたるなどの経験値を上げることが必要。
❸ 実行する能力
「実行する能力」とは以下の2点を指します…
- スケジュール管理や各種調整、業務を進めるうえでの障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方
- 予期せぬ状況への対応や責任の取り方
具体例を以下の順序で解説します。
- マネジメント体制の構築と統括
- コンティンジェンシープランの策定とアクション
1 例:マネジメント体制の構築と統括
プロジェクトの規模や自分のポジションによりますが…
実行する段階で重要なことは、関係者間のコミュニケーションを活性化し、情報連携、迅速な意思決定を促進すること
以下の図例を念頭に置いて、全体横断的な運用共通基盤を構築するなど運用管理性を高めるとともに、コスト削減やセキュリティ強化等を実現する力などが、実行する能力にあたります。
さらに、業務を進めるうえでの障害を特定し、適切に排除する能力や行動力が求められます。
「何をやらなければならないか」を設計し、それを実行するために組織を動かす力を高めることが重要です。
そのためには、上図のような全体像(構図)を念頭に、大局的な見地から適切に判断・対処する経験値を上げることが必要。
2 例:コンティンジェンシープランの策定とアクション
不測の事態に迅速かつ効果的に対応するためには、ガイドラインとして、コンティンジェンシープランを作成することが重要です。
その作成に関わることは、貴重な体験であり、自身のリスク管理能力を高めます。
「BCP(Business Continuity Plan)」が、組織における重要な業務を特定して、そのもろさや弱点を明らかにするのに対して、コンティンジェンシープランは、より重要性の高い業務から優先的に復旧させる計画を指します。
コンティンジェンシープランの策定の大まかな手順は以下のとおりです。
キャリアを積んだ人でも、予期せぬ事態が起きた際は間違いを犯す可能性はあります。
そのような状況に陥らないために、事前にコンティンジェンシープランを策定し、取れるアクションを明確にしておくことが大切です。
このような策定に関わる経験やアクションをとおして、予期せぬ状況への対応力が磨かれます。
身につけたい能力=環境変化に対応できる汎用性・再現性のある能力
前記事で示したとおり、ポータブルスキルを獲得するには、「体験の総量」をあげることが近道です。
目まぐるしく変わるダイナミックな環境の下でうまくやっている企業のリーダーは、異なる環境下での経験が豊富。
いわゆる「ジグザグのキャリア」で体得した能力やスキルが「環境変化に対応できる汎用性・再現性のある能力」となり、ポータブルスキルにつながります。
ただし、ジョブローテーションのない企業では、新たなスキルを獲得する体験機会には恵まれません。
そこで、「何を学ぶか」を明らかにして、以下の3点の工夫をすることが重要…
- 異動や出向に自ら手を挙げ、他の業務経験を積む
- 他の課の活動に目を向け、情報交換や相談を積極的に行う
- 副業・兼業の解禁を視野に、働くことと学ぶことを一体化する
以上の3点の工夫について、早い時期からアクションを起こしましょう。
次回は、ポータブルスキルの要素「人との関わり方」を取りあげて記事にする予定。
本記事でふれた「体験総量」をあげるために、副業を始める人が増えています。
副収入を得る…というメリットも大きいので、ライフプランも好転します。
新たな働き方を模索している方のために、以下の記事も掲載しました…