顧客との信頼は、顧客と「理想を共有する」プロセスのなかで育まれます。
その過程でカギとなるのは…
自分の言葉が相手にどんな影響を与えるのかを理解し、最善の提案ができるコミュニケーションスキル。
この記事では…
顧客の心を動かす
11の実践スキルをご紹介します
これらは、単なる「話し方のテクニック」ではありません。
顧客の信頼を獲得し、成果へとつなげるための実践的なツールです。
これからの顧客との接点で、
あ、コレ、やってみよう
そう思えるヒントを見つけて、あなたも「できる営業」への一歩を踏み出してください。

- 1. 賛同のテクニック:相手の心を開く「受け止める」姿勢
- 2. 弱みと長所をセット化する:人間味で心の距離を縮める
- 3. 因果関係で語る:「なぜ」を伝える納得のロジック
- 4. 順接で語る:言葉の印象をポジティブに
- 5. 話題をコントロール:会話の道筋を優しく示すひと言
- 6. 行動への心理的ハードルを下げる:「もうすでに始まっている」ように話す
- 7. 顧客との共通点を見つける:雑談で「人」としてつながる
- 8. 「ため」をつくる:第一印象と「歓迎」の気持ちを伝える
- 9. 小さなことを覚えておく:「特別感」が信頼を育む
- 10. 顧客の感情軸を見極める:「得たい」か「避けたい」かで言葉を選ぶ
- 11. セカンドプランを用意する:ピンチをチャンスに変える戦略
- 「信頼」という名の資産を育む
1. 賛同のテクニック:相手の心を開く「受け止める」姿勢

人は、「自分を理解してくれる人」に心を開きます。
営業も同じ。
まずは相手の言葉にしっかり耳を傾け、「賛同」して受け止めることから始めましょう。
導入コストがネックなんですよね
おっしゃる通りです
初期投資は大きく感じられますよね
このようにまず相手の意見を受け止めることで、顧客は「理解された」と感じ、心理的な防御を解きます。
信頼の土台ができたところで…
実は、この費用には
3年分のメンテナンスが
含まれているんです
こうして話を進めると、顧客の中に「反発」ではなく「納得」が生まれやすくなります。
ネガティブな意見に対しても…
まずは「自分の意見」を脇に置き、「相手の気持ち」に賛同することがポイント。
賛同は、相手の心を開き、スムーズな対話を生み出すための強力なコミュニケーションスキルになります。
賛同を示すには、まず「聴く姿勢」が欠かせません。
そんなトップセールスの習慣をまとめた記事がこちらです👇
2. 弱みと長所をセット化する:人間味で心の距離を縮める


人は、完璧な人よりも「人間味のある人」に心を許します。
営業においても、「弱みを見せること」は信頼を深める大切なスキルです。
ポイントは、弱みをさらけ出すだけでなく、それを長所とセットで語ること。
たとえば、
もう少し安ければいいんだけど…
このように指摘されたとき。
まずは、賛同のテクニック…
確かに、他社と比較すると
高く感じられますよね
そして、自社の価値(長所)を提示…
ただ、その分、導入後も
安心のサポートをご提供できます
このように、「弱み」を素直に認めつつ、その背景にある「価値」や「こだわり」を一緒に伝えることで、 顧客は「誠実さ」と「自信」の両方を感じとります。
弱みを隠さず、正直に伝える。
でも、同時にそれを支える長所も添える。
そうすることで…
あなたへの信頼感は高まり
顧客との距離も縮まります
3. 因果関係で語る:「なぜ」を伝える納得のロジック


おススメの理由を「結果」のみで語るのは不十分。
人は、「なぜそうなるのか」という「因果」を理解してこそ、深く納得します。
因果の【因】は「理由」や「根拠」の部分。
営業における【因】とは…
アピールポイントにあたります。
耐久性が高い分、長期的には
コスト削減になります
次に、顧客の行動を促す事例を紹介します。
実際に「見てもらう」「聞いてもらう」といった場を設定するのも効果的。
これが、営業における【果】にあたります。
たとえば…
この素材を採用したことで
3年後のメンテナンスコストが
半分になった企業があります
このように【因】と【果】をセットで伝えることで、顧客は「理由のある提案」として受け止めてくれます。
さらに、具体的なデータや事例を交えることで、説得力は一段と高まります。
ただし、数字や事例は短時間で理解できるよう簡潔にまとめることが大切。
専門用語の多用も避けましょう
「なぜ」を自分の言葉で伝えることが、信頼につながります。
4. 順接で語る:言葉の印象をポジティブに


「ですが」「しかし」といった逆説の言葉は、相手に「否定された」印象を与えてしまうことがあります。
機能はいいけど、予算が心配…
この顧客の感想への対応を比較してみましょう。
心配はごもっともです しかし…
今期中に導入しておくことで
補助金の対象になります
わかります だからこそ…
補助金の対象となる今期の導入を
検討してはいかがでしょう
たったひと言、「しかし」を「だからこそ」に置き換えるだけで…
言葉の印象は前向きになります
顧客は「反論された」とは感じず、「理解されたうえで、より良い提案をもらえた」と受け止め、自然と心を開いてくれるのです。
5. 話題をコントロール:会話の道筋を優しく示すひと言


「要は…」が口癖になっている方、結構いらっしゃいます。
しかし、「要は」「つまり」と切り出すよりも、議論が迷走しそうなときこそ、
大切なのは…
…と語りかけるほうが、はるかに自然で相手に寄り添った印象を与えます。
たとえば…
「様々なご意見がありましたが…」に続いて
要は、サポート体制の充実が
重要ということです
大切なのは、サポート体制を
整えることです
このように比較すると、印象の違いがよくわかります。
「大切なのは」を使うことで、次のような効果が得られます。
- 相手の意見を否定せずに要点を整理できる
「要は」「つまり」と言い切るよりも柔らかく、対話の流れを崩しません。 - 「一緒に考える」という共感の姿勢が伝わる
相手に寄り添いながら結論へ導く印象を与え、信頼感が生まれます。 - 議論を建設的な方向へまとめやすくなる
感情的な対立を避けつつ、全員が納得できる「共通のゴール」を提示できます。
「大切なのは」というひと言は、
相手の意見を尊重しながら、会話を前向きな方向へ導く…
やさしい舵取りの言葉
ぜひ、次の商談や会議で試してみてください。
6. 行動への心理的ハードルを下げる:「もうすでに始まっている」ように話す


人は、新しく始めるより、「すでに始まっていること」を続けるほうが心理的にラクに感じます。
これは「一貫性の原理」と呼ばれ、営業や説得では「イエス・セット」として応用される心理効果。
「自分はすでに動いている」と感じた瞬間に…
人は行動を正当化しやすくなります
営業でも、この「すでに始まっている感」を演出すると効果的。
同業他社では導入が進み
御社もすでに動き始めています
このように話すことで、顧客は「流れに乗っている」と感じ、自然と行動を後押しされやすくなります。
意思決定を「スタート」ではなく「完了に近いもの」として感じさせることで、心理的ハードルを下げ、スムーズな判断を促すことができるのです。
他にも…
ご検討段階というより…すでに
次のフェーズに進むタイミングですね
この内容で…あとは
スケジュールを調整するだけですね
以上のような声かけも同じ効果があります。
顧客は「まだ検討中」ではなく「進行中のプロセスの一部」に自分を置き換えるため、前向きな決断をしやすくなります。
ポイントは、次の3点…
- 「始めましょう」ではなく「もう始まっていますね」と伝える
- 「行動のハードル」ではなく「流れの継続」を意識させる
- 断定ではなく、穏やかに「自然な流れ」として提示する
「すでに始まっている」という言葉は、プレッシャーを与えるのではなく、相手の中にある「前向きな意志」を静かに引き出すための表現。
無理に背中を押すのではなく…
気づいたら一歩踏み出していた
そんな自然な行動変化を生む営業トークを目指しましょう。
7. 顧客との共通点を見つける:雑談で「人」としてつながる


商談の場を和ませ、信頼関係を深めるのは、意外にも「雑談」のなかにあります。
共通点の発見は、顧客との関係構築において
最も近道となる手法のひとつ
人は、「自分と似ている」と感じる相手に自然と親近感を抱くもの。
この心理は、「類似性の法則」として知られています。
出身地、趣味、家族構成、価値観など、どんな小さな共通点でも、会話の潤滑油として大きな効果を発揮。
出張で名古屋ですか?
私も先月行きました
あの味噌カツ、クセになりますね
ゴルフをされるんですね
私のほうは 最近ようやく
100を切ったところでして…
共通の話題が生まれた瞬間、心理的距離は一気に縮まります。
顧客の印象は「営業担当」ではなく「気の合う人」に変わる。
注意点は、共通点の「深掘り」です。
共通点は「探すもの」ではなく、「気づくもの」。
相手の話の中から自然に拾い上げ、素直なリアクションでつなげましょう。
たとえば…
- 相手の話題をメモしておき、次回の訪問で軽く触れる
- 季節や地域、ニュースなど「誰でも話せるテーマ」をストックしておく
距離の詰めすぎも要注意!
プライベートを掘りすぎたり、馴れ馴れしくなったりすると、かえって逆効果です。
あくまで「ビジネスの入口としての雑談」であることを忘れずに。
「雑談」のノウハウについては、以下の記事が参考になります。ご活用ください。
8. 「ため」をつくる:第一印象と「歓迎」の気持ちを伝える


最初の数秒間の印象が、その後の会話を左右します。
まずは…
次の3つのポイントを意識してみてください。
- 名前を呼ぶ前に、軽く呼吸をしてから言葉を発する
- 声は0.5トーン上げ、語尾をやわらかく
- 「こんにちは」「ありがとうございます」などの挨拶こそ、「ため」を意識する
たとえば…
ため…(声のトーンを上げて)
田中様、お電話ありがとうございます
いつもお世話になっております
一拍の「ため」やトーンの変化があるだけで、相手は特別感を感じます。
一方で、間を取らずに話すと、どんなに丁寧でも事務的な印象を与えてしまう。
田中様お世話になっております
F社の佐藤です
「ため」は、言葉を「押し出す」ための間ではなく、相手を受け入れるための間です。
最初のひと言で「この人に話したい」と思ってもらえるよう、 商談ではぜひ、「一拍の魔法」を意識してみてください。
9. 小さなことを覚えておく:「特別感」が信頼を育む


お子さんがこの春ご入学でしたね
ジョギング日和の季節になりましたね
こうした何気ない記憶が「信頼の種」となり、芽を出します。
心理学でいう「返報性の原理」。
「覚えてくれていた」という行為に対して、人は「この人を信頼しよう」と返したくなる、という心の働きです。
他にも…
息子さんの野球チーム
その後、どうですか?
マラソン大会
無事に出場されましたか?
こうしたひと言が「あなたは私の話をちゃんと覚えてくれている」という信頼の証になります。
ポイントは…
無理に話題を広げず、「覚えていた」という事実のみ伝えること。
過剰に私生活を掘り返すのは逆効果になります。
あくまで、
さりげなく覚えていた…
という温度感が大切
顧客のひと言を思い出して、会話のはじめに添えてみてください。
小さなひと言が、関係を大きく変えるきっかけになります。
「関係を変える」ちょっとしたテクニックに「ネームコーリング」があります。以下の記事で解説しています。ご活用ください。
10. 顧客の感情軸を見極める:「得たい」か「避けたい」かで言葉を選ぶ


顧客の価値観は、大きく2つの軸に分けられます。
- 獲得志向:目標を「達成したい」タイプ
- 回避志向:失敗や損失を「避けたい」タイプ
この「感情の軸」を見極めることが、言葉選びのポイントです。
営業の現場では、たとえば次のように使い分けます。
コストを削減したい企業様には
こちらのプランが最適です
→ 「損を避けたい」心理に響く、回避型の言葉
事業拡大を目指す企業様には
最適な生産性向上プランです
→ 「成長を目指す」心理に響く、達成型の言葉
顧客のタイプを見分けるには、話の中で出てくるキーワードに注目します。
- 「リスク」「心配」「コスト」などをよく口にする人 → 回避志向
- 「チャンス」「拡大」「挑戦」などを好む人 → 達成志向
相手がどちらのタイプかを早い段階でつかめば、伝える内容は同じでも、響き方がまったく違うことを実感できるでしょう。
たとえば、同じ提案でも…
- 回避タイプには → 「トラブルを防げます」「コストリスクを減らせます」
- 達成タイプには → 「生産性を高められます」「売上アップにつながります」
言葉の方向性を合わせることで、顧客は「自分の考えを理解してくれている」と感じ、あなたの提案をより前向きに受け入れるようになります。
次の商談ではぜひ、相手は…
「得たい人」か「避けたい人」か
そのタイプを耳を澄ませて見極めてみてください。
ひと言の選び方が、信頼と成果を分けるカギになります。
11. セカンドプランを用意する:ピンチをチャンスに変える戦略


交渉の場では、最初の提案がそのまま通ることは多くありません。
むしろ、「通らなかった時」にこそ、営業の力量が問われます。
A案が難しい場合は、Bプランなら
今期中に導入可能です
コストも20%抑えられます
このように、すぐに「別の選択肢」を提示できる営業は、「柔軟で信頼できる」と感じてもらいやすくなります。
セカンドプランは、「譲歩」ではなく「戦略」です。
大切なのは、主導権を渡さない形で提示すること。
たとえば…
もし無理でしたら
別のプランもありますが…
→ 控えめすぎて、主導権を失いやすい。
A案が最適ですが、目的によっては
B案がよりスピーディです
→ 選択の主導権を自分が握りつつ、相手に決定権を委ねるバランスがとれている。
セカンドプランは、 事前準備で完成度を高めておくことが大切。
「その場しのぎ」では説得力は低下します。
準備のポイントは次の3つ…
- コスト・納期・仕様など、比較基準を明確にしておく
→ どちらのプランがどんな条件で有利かを即答できる状態にしておく。 - 「目的」に応じて提案を切り替えられるようにしておく
→ 価格重視・スピード重視・サポート重視など、複数の軸を設定。 - どちらを選んでも「前向きな結論」に導く構成にしておく
→ 「AでもBでも、顧客の成功につながる」というメッセージで締める。
ピンチの瞬間こそ、あなたの信頼が試されるチャンス。
次の商談ではぜひ…
セカンドプランを引き出しに入れて
臨んでみてください
「信頼」という名の資産を育む


「できる営業」とは、派手な話術を操る人ではありません。
顧客一人ひとりの思いに寄り添い、 自分の言葉を丁寧に選びながら、理解しようと努める人のことです。
誠実さ、論理、そして温かみ
この3つがそろったコミュニケーションは、どんな相手の心にも静かに届きます。
特別なことをする必要はありません。
今日から、目の前の顧客との会話の中に、 ほんの少しの変化を取り入れてみてください。
小さな積み重ねが大きな信頼となって、あなたの未来を変えていきます。