部下がまたミスをした。

マネジャー

注意したら、
パワハラって思われないか?

スルーすれば、波風も立たない。 

そんな考えがよぎって、言葉に詰まる。

でも、同じミスが繰り返されたら、
周りのモチベーションは、静かに落ちていく。

こんな出口のない板挟み
心当たりはありませんか?

ハラスメントを恐れるあまり部下との関わりを避けてしまうと、

アドバイザー

若手は自分の課題に気づけません

成長機会も失ってしまう。

そんなあなたに、
この記事では次の2点を解説します。

  • パワハラの境界線を正しく見極めるポイント
  • 「ネガティブ・フィードバック」の技術

ポイントは、

アドバイザー

【SBIモデル】
事実・行動・影響
この3つを分けて伝えること

これを意識すれば、
パワハラにならずに、部下の行動は変えられます。

管理職が「部下を叱れない」理由

管理職が部下を注意・指導できない理由をまとめた図解スライド。「パワハラと言われる恐怖」「嫌われたくない・関係悪化の懸念」「今の若者への関わり方が分からない」という、心理的・スキル的な3つの要因を解説しています。

なぜ多くの管理職は「叱ること」を避けてしまうのでしょうか。その背景には、

アドバイザー

ハラスメントを巡る環境変化
そして、心理的な要因があります

ハラスメント回避による防衛的マネジメント

ハラスメント回避による防衛的マネジメントの実態を解説する図解スライド。パーソル総合研究所の調査で「約8割の管理職が叱らない」というデータや、恐怖心から注意を極端に躊躇する指導の停止についてまとめています。

今の職場では、
「防衛的マネジメント」が蔓延しています。

マネジャー

自分の指導がパワハラと
受け取られるのではないか

そんな恐怖心から、
部下への注意を極端に躊躇してしまうからです。

複数の調査結果でも、
管理職の約8割が「部下がミスをしても叱咤しないようにしている」と回答しています。

パーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」では、管理職の81.7%が「ミスをしてもあまり叱咤しない」と回答

マネジメントの必須機能である「指導」が事実上停止し、事なかれ主義が常態化しているのが現実です。また、

アドバイザー

伝え方のスキル不足も、
叱れない理由の一つ

「叱らないこと」が生む成長停滞

部下を「叱らないこと」が生む成長停滞の副作用を解説する図解スライド。短期的にはパワハラリスクが低下し快適であるものの、長期的には心理的距離感やスキルアップの遅れ、モチベーション低下などの放置リスクがある要点をまとめています。

上司が防衛的になり関わりを避けることは、パワハラのリスクを表面上は下げるかもしれません。

しかし、それは上司と部下の間に心理的な距離感を生み、

アドバイザー

「成長実感の喪失」という
深刻な副作用をもたらします

「叱られないこと」は、短期的には心理的負担が少なく快適に思える。

しかし長期的には、
部下のスキルアップの遅れやモチベーションの低下に直結します。

それは優しさではなく、残酷な「放置」と同じ。

💡あわせて読みたい
「関わらないマネジメント」から抜け出したい方は、以下の記事も参考になります。ご活用ください。

ハラスメント問題の実態

ハラスメント問題の実態と表面化しない隠れた退職理由を解説する図解スライド。離職データと隠れた暗数、相談されない組織の共通点(上司への不信感、無力感など)の2つの要点をまとめています。

ハラスメントによる離職は、想像以上に深刻。

データから見えてくるのは、

アドバイザー

「隠れた退職理由」の存在です

離職データと“隠れた暗数”

離職データと隠れた暗数を解説する図解スライド。ハラスメントによる離職が年間約86万人、そのうち約3分の2(約57万人)が理由を伝えず退職しているという、表面化しない自己都合退職の課題をまとめています。

職場におけるハラスメント問題は、職場の雰囲気を悪化させるだけでなく、莫大な人材流出を引き起こしています。

推計によれば、
1年間でハラスメントを理由に離職した労働者は全国で約86万人

パーソル総合研究所の調査に基づき、2021年の1年間でハラスメントを理由に離職した労働者は約86.5万人と推計されています。そのうち約57.3万人が退職理由を会社に伝えていない「暗数」として扱われています。

深刻なのは、そのうちの約3分の2(約57万人)が、退職時に会社に対して

アドバイザー

「ハラスメントが理由である」
伝えていないという事実

多くの場合、
本当の理由は隠されたまま「自己都合退職」として処理されています。

つまり多くの問題が
「見えていないまま」組織の中に蓄積しているということです。

相談されない組織の共通点

ハラスメントを相談されない組織の共通点を解説する図解スライド。会社の対応率が17.6%と低いことや、客観的事実より役職や権力を重視する「誰が言ったか」の風土・環境についてまとめています。

なぜ、被害者は声を上げないのでしょうか。
それは…

若手社員

会社に言っても無駄だ

そんな絶望感(相談無力感)があるからです。

データによると、被害者が会社にハラスメントを認識させても、事実確認や面談などの対応に至ったケースはわずか17%程度

パーソル総合研究所調査では、会社が実際に対応したケースは17.6%のみ。約8割は未対応でした

客観的な事実よりも

若手社員

誰が言ったか(役職や権力)
で物事が決まる

こんな風土がある職場では、問題がより隠蔽されやすくなります。

パワハラと指導の境界線

パワハラと適切な業務指導の境界線を解説する図解スライド。厚労省の3要素(優越的な関係、適正な範囲、就業環境)と、判断基準である「目的」と「業務の合理性」の要点をまとめています。

指導とパワハラは似て非なるものです。

どこからがハラスメントになるのか、判断の基準を明確にしておきましょう。

厚労省の3要素

厚生労働省によるパワハラの3定義と、適切な業務指導との境界線をまとめた図解スライド。優越的な関係、業務上必要かつ相当な範囲、就業環境が害されることの3要素と、判断における「目的・必要性・相当性」の重要性を解説しています。

厚生労働省は、
以下の3つをすべて満たすものをパワハラと定義しています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務の適正な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

指導の本質は「部下によくなってほしい」という愛情。自己の優位性の誇示や、

アドバイザー

攻撃自体が目的化している
パワハラとは根本的に異なります

判断基準は「目的」と「業務の合理性」

パワハラと指導の判断基準を解説する図解スライド。嫌がらせ目的の人格否定を行うパワハラ(NG例)と、部下の能力を引き上げるため行動改善を提案する指導(OK例)の違い、および目的・手段・頻度などの注意点をまとめています。

一見厳しく見える対応でも、それが直ちにパワハラになるわけではありません。

たとえば…
「通常よりも高いレベルの業務を任せる」という行為。

これを嫌がらせ目的で行えばパワハラですが、

マネジャー

部下の能力を引き上げる
ストレッチのため

こんな合理的な目的があれば、正当なマネジメントとして認められます。

【NG例とOK例】

 ❌ 人格の否定・攻撃(パワハラ)

人格否定

なんでこんなこともできないんだ

⭕️ 行動改善の提案(指導)

行動改善

今の進め方だとミスが起きやすい
こう変えよう

過去の裁判例を見ても、
多数の面前で「できが悪い」と人格を否定する発言はパワハラ。

しかし、業績改善などの明確な目的のために行われた「業務上の叱責(手段が妥当なもの)」は、正当な指導と判断されています。

この「目的」と「合理性」が、
指導とパワハラを分ける最も重要なポイント。

注意点は、同じ言動でも

アドバイザー

「頻度・継続性・関係性」によって
判断が変わる点です

💡あわせて読みたい
正論を伝えているつもりでも、相手を追い詰めてしまう「ロジハラ」には注意が必要。配慮ある伝え方については、以下の記事が参考になります。

正しいネガティブ・フィードバックの技術

部下の成長を促すための正しいネガティブフィードバックのスキルをまとめた図解スライド。感情的な「怒る」と、客観的事実に基づき未来の行動改善を促す「叱る・指導する」の違いを比較・解説しています。

境界線を理解したら、次は実践です。

部下との関係性を壊さず、
行動改善を促す3つのステップを解説します。

① SBIモデル(事実ベースで伝える)

事実ベースで伝える「SBIモデル」を解説する図解スライド。Situation(状況の特定)、Behavior(客観的な行動の指摘)、Impact(行動による影響)の3つの要素で部下の自己防衛を防ぐ手順をまとめています。
マネジャー

だから君はダメなんだ

マネジャー

やる気はあるの?

こんな人格や性格を否定する言葉は、相手を萎縮させるだけ。

業務改善にもつながりません。

客観的な事実に基づき、
具体的な行動を指摘するために有効なのが「SBIモデル」です。

抽象的な指摘を避け、事実・行動・影響の3つに分解して伝えます。

【NG例とOK例】

❌ 抽象的で伝わらない

抽象度 高

ちゃんと確認してよ

⭕️ 事実ベース

事実ベース

資料の年度データに誤りがあったよ

具体的には以下のように伝えます。

① 状況

【Situation:状況】
今日の午前中の打ち合わせで

② 行動

【Behavior:行動】
提案資料に古い年度のデータが
3箇所含まれていたね

③ 影響

【Impact:影響】
その結果、クライアントが
判断を保留することになったよ

毎回ゼロから考える必要はありません。

  1. 〇〇の場面で
  2. △△という行動があって
  3. 結果として□□という影響が出ている

このように、
状況・行動・影響の因果関係に絞って伝える。

そうすることで、
部下は自己防衛のスイッチを入れることなく、自分のミスと向き合うことができます。ただし、

アドバイザー

事実だけを淡々と伝える
冷たく感じられます

そこで重要になるのが、
次に紹介する「Iメッセージ」との組み合わせです。

② Iメッセージ(感情の伝え方)

「Iメッセージ」を用いた感情の伝え方を解説する図解スライド。相手を主語にして非難する「YOUメッセージ」のNG例と、事実をベースに私(I)を主語にして素直な感情を伝えるOK例の要点をまとめています。

相手の反発を招かずに、
管理職としての真剣な思いを伝えるテクニックが「I(アイ)メッセージ」です。

相手を主語にする「YOUメッセージ」は、非難や攻撃と受け取られがち。

主語を「私(I)」に変えて、
自分の感情と影響を伝えることで、相手の自発的な反省を促します。

アドバイザー

感情は「弱い言葉」で伝えるほど、
相手に届きやすくなります

【使いやすい感情の例】

  • 心配している
  • 困っている
  • 不安に感じている
  • 残念に思っている

【期限遅れの場合】

YOUメッセ

なんで期限を守れないの?

   Iメッセ

期限がズレそうなら一言もらえる?
早めに動ければ安心だ

【報告漏れの場合】  

YOUメッセ

なんで報告しないの?

   Iメッセ

報告がないと段取りが狂って
焦るから、連絡をもらえると助かる

ポイントは、
事実に伴う「素直な感情」を伝えることです。

NG例は、次のような伝え方。

感情的

【怒りをぶつけているだけ】
私はお前の態度にイライラする

正論派

 【正論の押し付け】
それ、常識だよね

③ 傾聴で心理的安全性をつくる

部下の成長を促すための正しいネガティブフィードバックのスキルをまとめた図解スライド。感情的な「怒る」と、客観的事実に基づき未来の行動改善を促す「叱る・指導する」の違いを比較・解説しています。

SBIモデルやIメッセージを相手の心に届けるための土台となるのが「傾聴」です。

ミスを発見した際、
即座に指摘して問い詰めるのは逆効果。

正しい手順を踏むことで、相手も話しやすくなります。

【正しいフィードバックの手順】
ミス発見…

NON 傾聴

【いきなり指摘】また同じミス?
注意するように言ったよね

   傾聴あり

聞く ➡ 要約 ➡ 指摘

① 聞く

当時の状況を
整理して聞かせてくれる?

② 要約・受容

なるほど、〇〇を優先したのね
事情はわかりました

② 指摘

ただ、事前報告がないと困る
次は即時報告を頼みます

途中で話を遮ってアドバイスを始めてしまうと、傾聴の効果は大きく下がります。

聞きすぎて論点がぼやけないよう、

アドバイザー

5〜10分程度
区切るのがポイントです

厳しいフィードバックが必要な場面でも、まずは

部 下

自分の話を最後まで聞いてくれた

部下がそう感じて初めて、
こちらの指摘は届くようになります。

💡あわせて読みたい 
傾聴を通じて部下の気持ちに寄り添い、信頼関係を築くリーダーシップについてさらに深く知りたい方は、以下もあわせて読むと理解が深まります。

「防衛的施策」から「育成志向のマネジメント」へ

心理的安全性を高める正しいフィードバックの手順を解説する図解スライド。いきなり指摘するNG例に対し、①先に聞く、②要約・受容、③指摘(SBIやIメッセージ)という3つのステップを踏むOK例をまとめています。

「関わらない」という防衛策では、
抱えている課題は好転しません。

ネガティブ・フィードバックは、
部下の成長に必要な関わりです。

実践するためのステップは次のの3つ。

  1. SBIモデル:事実ベースで具体的に伝える
  2.  Iメッセージ:感情と影響をセットで伝える
  3. 傾聴:指摘前に必ず相手の話を聞く

「叱る」のではなく、

アドバイザー

成長のためにフィードバックする

この視点に立つだけで、
マネジメントは大きく変わります。

まずは次の1回、「事実だけを伝える」ことから始めてみてください。 

それだけで、部下の反応は驚くほど変わります。

スポンサーリンク