管理職でなくても影響力はつくれる|今から始めるラテラル・リーダーシップ
役職のないまま任された、
新プロジェクトのリーダー。
年上や他部署のメンバーは、
思うように動いてくれないだろうなぁ…。
それにしても、
なぜ自分ばかり頭を下げ、
理不尽な思いをするのか
そんな、あなた…
権限のないまま最前線で板挟みになり、
心がすり減っていませんか?
かつてリーダーシップは
「肩書きによる指示」でした。
しかし、部門を超えた調整が不可欠な今、
求められているのは「役職に頼らず周囲を動かす力」です。
では、肩書きがない人は
どうやって周囲を動かせばいいのでしょうか?
そのヒントが
ラテラル・リーダーシップです
- 権限に頼らず、人を動かす考え方
- 周囲を巻き込む具体的なステップ
- 影響力を高める実践法。
これらを、順を追って解説します。

なぜ今、「役職のないリーダー」が求められているのか?

ビジネス環境は、
以前とは明らかに変化しています。
市場の動きは速くなり、
顧客のニーズも細分化しました
働き方も多様化しています。たとえば…
- フラット化する組織構造
- プロジェクト型の仕事の増加
- 管理職不足
その結果、上意下達のピラミッド型組織だけで業務を進めることが、以前ほど機能しなくなっています。
フラット化する組織構造

ハイブリッドワークの普及により、
働く場所や時間の制約は小さくなりました。
オンライン会議ツールの発達によって、
他部署と直接やり取りすることも珍しくない。
情報の流れは「縦」だけでなく
「横」にも広がっています。
こうした環境では、
部署間をつなぎ、
情報を整理し、
関係者を結びつけられる人材の価値が高まります。
単なる実務担当ではなく、
調整役や橋渡し役として
機能できる人が必要とされているのです
プロジェクト型の仕事の増加

営業だけ、開発だけで完結する業務は減少傾向。
現在は、複数の部門が関与するプロジェクト型の仕事が増えています。
部門が増えれば、
それぞれの優先順位や事情も異なる。
利害が衝突する場面も避けられません。
そのような状況では、
特定部署の権限で押し切るやり方は機能しにくくなります。
関係者の立場を理解しながら、
合意点を探る調整力が求められます
管理職不足と「任される現場」

多くの組織で、管理職はプレイングマネジャーとして実務も担っています。
そのため日常業務に追われ、
細かな調整まで十分に関与できないケースも増加。
中堅社員が実質的なプロジェクト推進役を担う場面も少なくありません。
しかし、必ずしも正式な権限が
与えられているわけではない。
その状態で、他部署と調整し、
物事を前に進めなければならない…
こうした状況は、特定の企業に限った話ではなく、
さまざまな現場で見られる傾向です。
だからこそ、「役職がない立場でどう影響力を発揮するか」というテーマが重要になってきたのです。
ラテラル・リーダーシップとは何か?

では、
ラテラル・リーダーシップとは何でしょうか。
端的にいえば、
肩書きに頼らずに
人を動かす考え方です
命令ではなく、納得、
上下ではなく、横の関係。
立場ではなく、信頼によって前に進める。
そんなリーダーシップを指します。
縦のリーダーシップとの違い

従来型のリーダーシップは、
役職を前提とします。
- 指示を出す
- 判断する
- 評価する
これらは、権限があるからこそ成立します。
一方、ラテラル・リーダーシップには
明確な上下関係がありません。
頼れるのは、次の3点です。
- 共感
- 信頼
- 専門性
「これをやってください」と業務を流すのではなく、
なぜ必要なのかを共有し、
相手の意思で動いてもらう。
強制ではなく、自発
ここに大きな違いがあります
横の影響力という考え方

権限がないとき、
残るのは「影響力」です。
影響力とは何でしょうか?
感情論でも、人望だけでもありません。
相手の判断を変えるのではなく、
相手が自分で判断できる材料を
整えることです
この発想は、ハーバード交渉プロジェクトで体系化された交渉理論にも通じます。
ロジャー・フィッシャーらは、
「立場」ではなく「利害」に目を向ける重要性を説きました。
- 肩書きではなく、利害
- 命令ではなく、合意
相手にとっての意味を整理し、
メリットと不安を言語化し、
双方が納得できる形に落とし込む。
その積み重ねが、横のリーダーシップです。
周囲を巻き込む5つの基本

影響力は、才能ではありません。
積み重ねでつくられます。
ここでは、横のリーダーシップを実践するための基本動作を整理します。
必要なのは、
派手な交渉術ではなく、
日々の関わり方です
1. 「目的」を共創する(指示ではなくゴールを共有する)

役職がなければ、
「命令」はできません。
代わりになるのが「納得」。
そのために必要になるのが「やる理由」の共有です。
私たちは何を目指すのか。
この取り組みは、
相手の業務にどんな意味を持つのか。
目的が自分ごとになったとき、
人は動きます
ゴールを押しつけるのではなく、一緒に描く。
ここが出発点になります。
2. 「思考」を組織化する(みんなの知恵を集める)

答えを持っている人が、
リーダーではありません。
複数の部署が関わる仕事では、
一人の正解より、全体の納得のほうが重要です。
だからこそ、問いを立てる。
どう進めるのがよいでしょうか?
他に選択肢はありますか?
意見を引き出し、
論点を整理し、方向性をまとめる。
その役割を担うことで、
議論のハブとして機能するようになります。
前に立つのではなく、流れを整える。
そこに横のリーダーの価値があります。
3. 「学習」の姿勢を見せる(共に学ぶ)

完璧である必要はありません。
むしろ、知らないことを認められる人のほうが信頼されます。
ここは詳しくないので教えてほしい
その一言が、相手の専門性を引き出します。
教える側に回った人は、主体的になります。
教える・教えられるの関係ではなく、
一緒に前に進む関係へ
その空気が、横の協力を強くします。
4. 「役割」を設計する(強みを活かす)

人は、必要とされていると感じたときに、
力を発揮します。
誰が何に強いのか。
どの場面で力を発揮できるのか。
そこを見極め、任せる。
この部分はあなたにお願いしたい
その言葉は、単なる依頼ではありません。
信頼の表明です。
役割が明確になると、
当事者意識も生まれます
5. 「フィードバック」を循環させる(評価ではなく感謝)

上下関係がないなら、
評価は必要ありません。
代わりに必要なのは、
「おかげで」の感謝の言葉です。
調整してくれたおかげで助かった
あの資料のおかげで議論が進んだ
成果ではなく、貢献を伝える。
感謝が積み重なると、
協力は習慣になります
心理学で強化する「影響力」

影響力は、
人柄だけで生まれるものではありません。
人の判断には、一定の傾向があります。
その傾向を理解しておくと、
巻き込みは設計しやすくなります。
社会心理学や交渉学は、
そのヒントを与えてくれます。
返報性と一貫性

まず返報性。
人は、何かを受け取ると返したくなります。
相手の部署の資料作成を少し手伝う。
必要な情報を先に共有する。
そうした小さな支援が、
次は自分が協力しよう…
という流れを生みます
次に一貫性です。
人は、自分が一度選んだ立場を保とうとします。
だからこそ、いきなり重い依頼をしない。
一度、ご意見を伺えますか?
まずは会議に参加してもらえますか?
このように、
小さな合意をつくり、それを積み重ねる。
その結果、関与が自然に深まっていきます。
影響力とは、
一気に動かす力ではなく、
合意を重ねていく設計なのです
BATNAとWin-Win

もう一つは、交渉の視点です。
協力を断られた場合、
相手は何を守ろうとしているのでしょうか?
たとえば…
今は自部署のKPIで手一杯
関わると責任だけ増える
そう感じているかもしれません。
一方で、こちら側にも選択肢があります。
他部署に相談する。
範囲を縮小して進める。
互いの状況を整理すると、
本当に対立しているのか、
その関係性が見えてきます
もし「負担が増える」ことが懸念なら、
工数を限定する提案ができる。
もし「成果が見えない」ことが不安なら、
評価指標を共有できる。
こうして利害を具体化すると、
お願いは
「条件付きの提案」に変わります
それが結果として、
双方にとって受け入れやすい形をつくっていきます。
💡 あわせて読みたい
部署間の板挟みや利害調整に悩む方は、こちらの交渉テクニックも参考にしてください。
権限を持たない立場で、上司も巻き込みたいと考える方は、上司を戦略的にマネジメントする思考法も役立ちます。
実践事例:葛藤を乗り越えたリアルな行動


考え方は理解できても、
実行に移すと、最初は協力が得られないことが多いものです。
ここでは、肩書きのない立場で動いた2つの事例を紹介します。
注目してほしいのは、
「何を変えたか」です。
事務職の改革事例


状況…
部署ごとに異なっていた進捗管理の方法を、統一しようと提案したケース。
最初の反応は…
今のやり方で問題ない
新しい仕組みを覚える余裕がない
提案は、正面からは受け入れられなかった。
ここで変えたのは、視点です。
「統一すべきだ」という自部署の論理から、
相手は何に困っているのか
という問いへと転換
各部署にヒアリングを重ねると、
月末の集計作業や二重入力といった負担が見えてきました。
そこで、提案の軸を変更します。
「管理方法を揃えたい」ではなく、
「月末作業を減らせる可能性」がある。
目的を「統一」から「負担軽減」へ置き換えました。
結果として全社導入に至りましたが、
重要なのは成果の数字ではありません。
相手の業務を起点に提案を組み直したこと。
そこが転換点でした。
若手社員の仕組み化


状況…
新人が同じミスを繰り返していたため、情報共有ノートをつくったケース。
最初の反応は…
仕組みはできても、
参加が広がらない
忙しくて書く時間がない
ここでやめたのは、書き込みの「依頼」です。
代わりに、
先輩の商談トークを自ら整理し、確認をお願いする形に変えました。
「協力してください」ではなく、
学ばせてください
という姿勢です
確認のつもりが、加筆が入る。
やがて他のメンバーも参加する。
こんな変化が生まれました。
共有は義務ではなく、
自分の知見が活きる場へと意味づけが変わりました。
事例から見える共通点


2つの事例に共通するのは、
自分の「主張の強さ」ではありません。
転換点は、
論点を「自分の正しさ」から
「相手の状況」へ移したことです
心理的安全性という土台


横のリーダーシップは、
技術だけでは機能しません。
前提になる環境があります。
それが、心理的安全性です。
なぜ横のリーダーに不可欠か


肩書きがない場では、人は慎重になります。
意見を言ってもムダかもしれない
失敗したら責められるかもしれない
そう感じる場では、
誰も積極的に関わろうとしません。
心理的安全性とは、
嫌われないことではなく、
挑戦しても関係が壊れないこと。
横のリーダーに求められるのは、
正解を示すことよりも、
挑戦できる場をつくることです
議論が活性化すれば、
調整も合意も進みやすくなります。
今日からできる3つの行動


特別な制度は要りません。
日々の振る舞いで変えられます。
① 無知を認める
ここから先は専門外です
意見をもらえますか
先に弱さを開示すると、
他の人も話しやすくなります。
② ミスを共有する
前回の段取りは甘かったです
次はこう改善します
失敗を隠さない姿勢は、 挑戦しても大丈夫だというメッセージになります。
③ 反対意見を促す
懸念があるとしたら、
どこでしょうか
異論を歓迎する問いかけは、
沈黙を破るきっかけになります。
心理的安全性は、
一度の発言で生まれるものではありません。
小さなやり取りの積み重ねで、
徐々に形成されます。
横のリーダーシップは、人を動かす前に、
人が動ける状態を
整える営みでもあるのです
肩書きがなくても、キャリアはつくれる


リーダーシップのあり方は、
少しずつ変わっています。
権限で動かす場面は、
もちろんあります。
しかしそれだけでは、
横断的な仕事は前に進みにくい。
だからこそ、
肩書きとは別の力が問われています
それが、横の影響力です。
明日からできる一歩


ラテラル・リーダーシップは、
特別な資質ではありません。
日々の関わり方の積み重ねです。
まずは一人、
同僚の強みを言語化してみる。
次に、
「この仕事の目的は何か」を共有する。
小さな対話から始めれば十分です
肩書きがなくても、関係性は築けます。
将来の管理職につながる資産


- 他部署との調整
- 利害のすり合わせ
- 合意形成のプロセス
これらは地味で、時間もかかります。
しかしその経験は、
将来、立場が変わったときに土台になります。
肩書きがついたから人が動くのではありません。
日頃の信頼があるから、
動いてもらえる
横のリーダーシップは、
今の仕事を進めるための技術であると同時に、
将来のための準備でもあります。
焦る必要はありません。
まずは、目の前の、
一つの合意づくりから。
その小さな積み重ねが、
やがて周囲の動きを変えていきます。
💡 あわせて読みたい
将来、リーダーや管理職になった際、さらにチームとの信頼を深めたい方はこちらも併せてご覧ください。
























































