ほんの数十年前まで、中高年の男性たちは「一家の大黒柱」として、家庭でも職場でも厚い信頼と尊敬を集めていました。
しかし今や…
「おじさん」はネガティブな文脈で取り上げられることが多くなった。
たとえば「おじさん構文」
- 絵文字・顔文字の多用
- 長文、句読点の多さ
- 語尾のカタカナ
- 不用意な馴れ馴れしさ
- 近況報告の過多
- 下心を感じさせる表現
コレ…
イタい「おじさん」の特徴の一つとされています。
とはいえ…
こうした特徴を並べられると…
おじさん
メールひとつ送るのにも
気をつかってしまう
そこで本記事では…
「おじさんバッシング」が起こる背景をひも解きつつ、 今求められる「新時代のおじさん像」に近づくための4つの行動をご紹介します。
01 日常に「小さな特別感」をつくる
02 コミュニケーションスタイルをフラットにする
03 健全な「競争」を取り入れる
04 サードプレイスを生活に取り入れる
働き盛りの中高年男性の皆さんが、知らぬ間に「タタかれるおじさん」にならないために、同世代だからこそ伝えたい「愛されるおじさん」へのヒントをまとめました。

いま「おじさん」に何が起きているのか

かつてはスルーされていた「おじさんの一言」が社会的な問題になる時代。
「著名なおじさん」の失言は可燃性が高く、常にSNSのどこかで炎上中。
東京五輪組織委の会長が女性蔑視と受け取られる発言をして、辞任に追い込まれた件を覚えている方も多いでしょう。
さらには…
「おじさん=ハラスメント予備軍」というイメージさえも拡大しつつある。
おじさん
部下の女性と話すだけで
緊張する
…とこぼす中高年男性も今や珍しくない。
不用意な一言が批判を招く現在…
発言ひとつにも繊細さが求められるようになった。
社会の空気がガラリと変わったこと、あなたも肌で感じているのでは…
「肩書きではもう戦えない」おじさんの現実

「おじさん」の立場を不安定にした要因のひとつが、役職定年制度の拡大。
これによって、多くの中高年男性が次のような現実に直面しています。
▼ 「名ばかり社員」という実態
- 発言権や裁量、部下の数が一気に減少
- 「偉い人」から「その他大勢」に転落
▼ 年下上司・年上部下の逆転構図
- 経験よりも成果が重視される風潮が後押し
- 年齢=上位という暗黙のルールが消滅
▼ 肩書き依存からの脱却を迫られる
- 肩書も「期限付き」
- 人格やスキルがないと、ただの「年長者」
かつての「肩書き=権威」という神話は崩壊しつつあります。
その現実を前に、「中身で勝負できる自分」を再構築できるかどうか。
それが、今の時代を生き抜くおじさんたちに求められているテーマなのです。
役職定年を迎えた後のキャリア設計について詳しく知りたい方は、『定年後も困らない!30代から始める「一生食える仕事」の見つけ方』をご覧ください。
定年後の「セカンドキャリアの備え方」については、次の記事が参考になります。
「強者いじり」の終わりが示す、おじさんの現在地


かつては「いじってもいい存在」として、どこか余裕のある存在だった「おじさん」。
世間的にも…
「おじさん」なら
いじられても当然でしょ
…という空気感があった。
「男性」という属性・集団に対する批判的な発言や揶揄(やゆ)的な表現であっても、それが「おじさん」なら許される。
そうした空気が、笑いとしての「おじさん」消費を支えてきました。
ところが今…
その「おじさんいじり」に対しても、批判の声が上がっています。
たとえば、おじさんの詰め合わせ騒動…
かつていじられても余裕だったおじさんたちも、いじりを受け流す余裕がなくなり、繊細な反応を見せるようになった。
おじさんが社会的な「強者」ではなくなった今…
かつては笑いとして流されていた「いじり」も、「いじめ」や「攻撃」として重く響くようになってきたのです。
世代的な立場や肩書きによる優位性も薄れ、「権威の象徴」としての責任だけを背負わされる一方…
おじさん
尊敬も保護も得られない
そんな中途半端で脆弱なポジションに置かれているのが、現在の「おじさん」。
もはや「おじさん」は、「いじってもいい強者」ではなく、時代の弱者に近い存在へと移行しつつあります。
愛される「おじさん」になる4つの行動


では…
そんな変化の波に揺れるおじさんたちが、どうすれば令和の社会に適応し、健やかに生きていけるのでしょうか?
1. 日常に「小さな特別感」をつくる


「会社での肩書き=私の価値」だった時代。
おじさんは、自己肯定感のすべてを仕事に預けていました。
そうなると…
肩書の消滅=存在感の消失と感じるのは当然。
けれど、これからは、
自分の価値は、仕事だけじゃない
…と、心も手も広げましょう。
仕事一辺倒から「自分軸の生き方」へと移行することがポイントです。
そのヒントは身近なところにあります。
まずは、あなたの日常に「小さな特別感」をつくることから始めましょう。
たとえば…
- 行きつけの喫茶店/定食屋で、店主や顔なじみの常連客と「まいど」「どうも」と短い挨拶を交わし、いつもの席で新聞を読む
- 早朝や夕方の公園で、いつも同じ時間に散歩やジョギングをしている人とすれ違いざまに会釈し合う
- 近所の図書館の決まった席で静かに読書をし、同じように利用している人と無言の共存意識と安心感を共有する
- たまに立ち寄る立ち飲み屋で、隣り合わせた人とその場限りの軽い世間話をし、一杯だけ飲んでさっと帰る
- 昔の映像をYouTubeで視聴し、チャット欄やコメント欄で他のファンとリアルタイムで感動や懐かしさを共有する
- 市民農園の小さな区画で野菜を育て、隣の区画の人と「今年の出来はどうですか」「あの肥料がいいらしいですよ」と情報交換する
- 行きつけの銭湯やサウナで、顔見知りの常連客と湯加減や天気の話を少しする
日常的な安心感と、ゆるやかな承認。
しがらみのない、一期一会の気軽な交流。
飾らない自分でいられる、リラックスした空間。
こうした「小さな特別感」を生む「小さな居場所」を見つけることが、私の価値を広げるきっかけとなります。
「昔ながらのおじさん像」と「これからのおじさん像」の違いは…
昔ながらのおじさん像 | これからのおじさん像 |
出世・肩書きが自信の根源 | 日常の小さな特別感から自己存在感を得る |
上司・部下の関係が中心 | 誰とでもフラットで、程よい距離感 |
競争・勝ち負けに執着 | 周囲との協調や共感、ゆるやかな承認 |
「男らしさ」に縛られる | どこでも飾らない自分でいられる |
このように、昔の「一本足打法」から、複数の価値に支えられた生き方にシフトすることで、不安も孤独もずいぶん軽くなります。
名刺を出さなくても
自分を肯定できる
そんな場所や役割をもっている人ほど、新時代を軽やかに生きていけます。
「なんとなく」過ぎる毎日を、もっと「自分らしく」過ごせる時間に変えたいという方は、『大人のためのライフスキル!:毎日を充実させる3つの幸福度アップの秘訣』の記事がおススメです。
2. コミュニケーションスタイルをフラットにする


かつての職場では、次のような価値観が当然とされていました。
- 仕事中心のアイデンティティ
- 「男らしさ」の強調
- 上下関係の重視
- 出世志向
- 家父長制的な意識
しかし、こうした昭和型の価値観は、現代の職場では「壁」になる場面が増えています。
たとえば、若手社員との雑談で、
一人前になったなぁ
…と褒めたつもりが、なぜか距離を置かれた。
そんな経験はありませんか?
こうした発言…
本人に悪気がなくても「上から目線」と受け取られます。
他にも…
「最近の若い人は根性がないな」など、昔と比較するような一言も、世代間ギャップを広げる原因になりがち。
ここで大切なのが…
「相手と同じ地平で話す」意識です。
「一人前になったなぁ…」ではなく、
ボクにはない発想だったよ
…など、部下であっても、若年であっても、優れた点は素直に降参する姿勢をもつ。
このことで、相手との距離がグッと縮まります。
ポイントは…
「相手がどう受け取るか」を意識し、
相手の反応を感じ取りながら
会話を調整すること
もう一つのポイントは、一方的に話すのではなく、真剣に聞くこと。
経験豊富なおじさんは、「自分語り」に終始しがち。
相手の話を丁寧に聞く姿勢をもたないと、職場でもプライベートでも地雷と見なされます。
以下のグラフは…
マンパワーグループが、入社2年目までの22~27歳の正社員男女400名に向けて、「上司との信頼関係」について調査した結果です。


「若手世代の約8割が『上司を信頼している』と回答!部下から見る「信頼できる上司像」とは」再グラフ化https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/20191127.html
「話す」より「聞く」ことが信頼を築くポイントになることが、よくわかります。
- 相手の反応を感じ取りながら会話を調整する
- 相手の話を丁寧に聞く姿勢
このようなコミュニケーションを心がけることで、 無意識に漂わせている「おじさん感」は和らぎます。
これが「愛されるおじさん」の下地となり、周囲との共感的なつながりを生んでいくのです。
若手との関係を良好に保つ「共感型リーダー」に興味がある方は、『共感型リーダーのコミュニケーション術:上司にしたいNo.1になる!』もおススメ。
「好かれる上司」になるためのコミュニケーション術については次の記事が参考になります。
3. 健全な「競争」を取り入れる


社会的な役割や責任感の一区切りとともに…
おじさん
張り合いがなくなった
…と感じること、ありませんか?
役職定年や管理職からの退任は、社会的な役割や責任感の喪失とともに、テストステロンの減少が重なりやすい時期と重なります。
テストステロンとは…
主に男性の体内で作られ、筋肉や骨格の発達、性機能、さらには意欲や競争心といった精神面にも影響を与える代表的な男性ホルモンのこと
日本メンズヘルス医学会では、テストステロンが「チャレンジ精神」や「社会貢献の意欲」など、心のエネルギーに関わるとしています。
(日本メンズヘルス医学会HPより)
このホルモンの減少が「張り合いがなくなった」「やる気が出ない」といった感覚の一因とされています。
また、NHK『きょうの健康』では「誰かと競い合うこと」や「自己表現して認められること」が、テストステロンを高めるカギだと紹介されています(監修:順天堂大学 堀江重郎教授)。
とはいえ…
仕事上、以前のように競争や承認は起きにくい。
だからといって、ビジネスの場で無理にバトルを仕掛けるのも、ちょっと違う。
そこで…
負けても楽しい
次が楽しみになる
そんな健全な「勝負の場」を、余暇の中につくってみましょう。
たとえば…
- ゴルフやボウリングのスコアを競う
- ボードゲームやカードゲームを仲間と楽しむ
- オンラインのカジュアルな対戦ゲームで遊ぶ
- テーマを決めて料理に挑戦し、食べ比べる
- スマホで「ベストショット」を撮り合う
他にも、ダーツやカラオケ、ウォーキングの歩数競争など、「小さな勝負」は日常にたくさんあります。
真剣だけど、心には余裕がある。
勝っても負けても、「またやろう」と笑える。
そんな「ちょうどいい戦いの場」が、あなたのやる気を静かに支えてくれます。
年齢を重ねても、まだまだ本気になれる自分がいる。
そんな自信が、「おじさん」を、まわりから自然と好かれる存在へと変えていきます。
4. サードプレイスを生活に取り入れる


想像してください、あなたの数年後、
おじさん
誰にも会わずに一日が終わる
…という毎日になるとしたら。
OECDの調査でも、50代以上の男性は友人との交流が少なく、孤立のリスクが先進国の中でもとくに高いと報告されています。
(参照:国土交通省 第3回 都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会 資料3-2より)
内閣府や厚生労働省は、孤独を「主観的なつながりの欠如」と定義しています。
つまりは、人との接触がない状態だけでなく…
「誰かとつながっている」感覚がもてない状態
この「感覚」は、健康リスクとも深く関係します。
国土交通省の資料(第3回 都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会)によると、孤独な人は早死にのリスクが約50%も高まるとのこと。
人との会話が極端に少ない日々は、心身の調子を崩す要因にもなります。
とくに中高年期は、役職定年や子育ての終了などで、社会との接点が減ることが多い時期。
そこで、おススメするのが…
サードプレイスを
生活に取り入れること
家庭でも職場でもない、「もうひとつの居場所」をもつことです。
北欧やドイツでは、地域のスポーツ施設や図書館が、自然な社交の場として機能しています。
日本では、スナックや趣味サークル、オンラインのコミュニティなどが、 同じように人とのつながりを育む場所になっています。
とはいえ…
人と直接つながるのは、ハードルが高い…
そういう方は…
話すでもなく
黙るでもなく、そこにいるだけ
そんな「ちょうどいい距離感」の居場所を、暮らしの中にそっと取り入れてみましょう。
筆者も基本一人が好きなので、この…
「ちょうどいい」居場所を見つけて
適度に利用しています
たとえば、こんな場所を思い浮かべてみてください。
- カフェのカウンター席や図書館の閲覧室
- 温泉地の休憩室
- 公園のベンチや美術館の展示室
- スポーツジムのマシンエリア
- DIY工房・木工体験スペース
- 行きつけのパン屋のイートインコーナー
どれも、過度な会話や義務感はなく、ただ「そこにいる」ことで人とのつながりを感じられる場所です。
他にも、銭湯の休憩スペースや釣り堀、コミュニティセンターのロビーなど、静かで心がほぐれる「サードプレイス」は、日常の中にたくさんあります。
誰かと同じ時間を過ごす…
それだけで、心に風が通るような「深呼吸」ができます。
人と会うのが、義務や気疲れではなく、心をほどく時間に変わっていく。
そんな場所がひとつあれば、自分の輪郭が少しずつ戻ってきます。
年齢を重ねたからこそ…
無理なく自然体でいられる
「居場所」が大切
それが、まわりからも「なんか、いいよね」と思われる「愛されるおじさん」への第一歩になるのです。
筆者と同じく、基本「おひとりさまが好き」という方は、以下の記事が参考になります。
「刀を置いた」おじさんは愛される


職場での立ち位置が変わった。
家での役割もひと段落している。
そんな今こそ…
「おじさん」が生き方を
シフトするタイミング
社会の空気が変わり、これまでの「おじさん像」も変化を求められています。
変わることを恐れず、それを「卒業」として受け入れてみましょう。
新しいステージのヒントはこの4つ…
- 「仕事=自分」という思い込みを手放す
- コミュニケーションスタイルをフラットにする
- 健全な「競争」を取り入れる
- サードプレイスを生活に取り入れる
明治維新で武士が刀を手放したように…
今は「戦う」おじさんから「愛される」おじさんへと変身するときです。
年下ともフラットに語り合い、小さなドキドキを見つけ、サードプレイスにたたずむ。
そんな「刀を置いたおじさん」こそ…
時代に愛され
静かに輝くのです