社員のモチベ―ションの低下は、アウトプットの「質」の低下を招きます。
放置すれば、メンタルの問題を抱えた社員の増加や離職といった事態にまで…。
マネジャーとしては、自身の職務で多忙を極める中、この問題にどう向き合えばよいのか、悩ましいことと拝察します。
そこで本記事では…
複雑化するモチベ―ション問題の知識とともに、3つの方策を提案し、そのポイントについて解説します。
モチベーションの原理と複雑化するモチベ―ション問題
モチベーションの原理としては…
本人が欲しいという気持ちを満たす[誘因]と、それを欲しいという気持ち[動因]が組み合わさり一致することで、モチベーションは喚起され、行動に結びつく。
と言われています。
モチベーション低下による現場の問題としては…
- 指示待ち人間が増えるなど、創造的な仕事が生まれにくい職場環境になること
- 放置すると、社員のメンタルの問題や離職を招くなどの心配が生まれること
現場を預かるマネジャーの悩みは…
- 人の心は思うように動かない…扱いにくく、どこから手をつけてよいかわからない。
- 個人差があり、何か一つの働きかけで、組織全体のモチベ―ションが向上するといった効果は期待できない。
という点にあります。
さらに、モチベ―ション問題には以下の背景が関係します
- 仕事は一生懸命やるべきだ(仕事自体が報酬)という価値観が低下
- 業績低迷の一方で、成果主義型の人事制度導入で、いっそうモチベ―ションが低下
- 金銭的報酬やポストというモチベーションの源泉が枯渇
- ヤング層:ポスト不足から先のキャリアが見えにくく、将来の希望を喪失
- ヤング層:将来の自分の姿を職場に投影することができず、意欲が減退
- ミドル層:職務の多重化による疲弊
- シニア層:出向先のポスト不足
- 非正規人材の日本企業全体に占める割合が4割近くに増大
- コロナの影響によりテレワークが普及
このような背景も影響し…
「頑張っても明日がいい日になると思えない」といったモチベ―ションの減退を招いています。
モチベーション問題解決に向けた3つの方策
❶ 方策1:スポット的な対応
社員個々の価値観の多様化により、一様の誘因では効果が期待できない…
そこで、マネジャーは一律にモチベーションを上げることはできない、という腹のくくり方をして、この問題に向き合う。
適切な人材を選んで機会提供し、その人材がモチベーションを高めて自律的な行動を起こし、成長していくプロセスを生み出そう、という個別的な対応をする…
つまり、スポット的な対応です…
このようなスポット的な対応のポイントは…
- 仕事を言われたとおり、淡々とこなす社員も必要。
職務の違いを含め、このような社員の必要性を認める。 - このような社員に対しては、職務内容に応じてその重要性を、成果に基づいてその貢献度をフィードバックしていく。
- 意欲的で自律的に働く人材は、機会を与えれば自ら誘因を見出す。このような社員には、仕事機会を誘因として提供する。
- 新たな仕事機会を与える際は、その「機会」を意味づけて提供する。例えば、新たな職務・異動・出向によって、どのようなキャリアが蓄積されるか、といった意味づけを丁寧に行う。
上記に加え、マネジャーには…
こうやったら人が動いた、こうやっても動かなかった、という試行錯誤を蓄積することが大切。
❷ 方策2:仕事に対するオーナーシップを醸成
仕事に対するオーナーシップとは、仕事に「所有感」をもたせること。
「これが自分の仕事だ」という当事者意識を高めることがポイントです。
そのためには、仕事のやり方は任せるという自由を与え、同時に、やったことはいいことも悪いことも含めて、本人に直接返ってくるという自己責任を問います。
※ここでいう「責任」は「必ずその仕事を完遂させる」という意味です。
マイクロマネジメントからマクロマネジメントへの転換です。
マネジャーの仕事は…
それぞれの個人のスキルと行動に応じた適切なサイズのジョブをつくること
本人のスキルセットと行動様式によって、適切なサイズには個人差があります。
それを見極めたうえで仕事を割り当て、大きな損失を生まない限りは委任する、という姿勢で臨みます。
※スキルセット:仕事を進めるために必要な個人の能力や資質、経験などの組み合わせのこと
このような仕事環境を提供することで、社員自ら考え行動し、積極的に課題やミッションを解決するなど、自律的に働く姿勢をもたせることができます。
社員の主体性・自律性が高まれば、ジョブ・クラフティングへと移行していくのも一つの方法です。
※ジョブ・クラフティング:従業員が仕事を主体的にとらえ直すことでやりがいを持てるように導くための手法
ポイントは、社員の仕事にハンズオンの感覚(仕事に対する手触り感)をもたらすこと。
例えば…
- 全体のプロセスに関わる経験をさせる。
- 「自分次第でチームの業績が決まる」といった状況をつくり出す。
- 社員の実績と責任を「見える化」する。(実績をグラフ化する等)
などです。
仕事に「所有感」を持たせ、「やらされ感」を取り除きます。
そのためには、マネジメント方法を見直し、管理と依存の関係から脱する必要があります。
マネジャーは…
社員に対して 腕を磨く仕事 を用意し、社員に任せます。社員は任されることによって、自分にしかできないこととは何か、真剣に考え始めます。
すると、自分で考えて仕事をするという自発的なモチベーションが醸成されます。
注意点は…
「実績の見える化」によって数値だけを追求するような「個人成果主義」に陥らないようにすること。
社員個々が自分の成果だけを追求するようになると、やがてチーム全体のモチベ―ションは低下していきます。
社員個々がどのように成果にかかわったか、というプロセス評価を重視することが大切。
❸ 方策3:ジョブ・デザイン(職務設計)の見直し
職務内容や特性そのものが人を動機づける潜在力をもっています。
社員の職務内容や特性を点検しましょう。5つの項目を紹介します…
マネジャーの役割は…
- 経営戦略・企業方針と目の前の仕事が一貫性を持ち、手がけた仕事が新製品開発、売り上げ増、顧客開拓や顧客との関係の深化など、組織のなかで一定の責任を果たすことにつながるように職務を設計。
- 出した成果が評価、称賛されるなど、フィードバックされる仕組みを構築。
職務の再設計は、人事部と連携しながら進めていきます。
経営戦略と人材戦略をリンクさせながら社員の職務を見直していくことがポイントです。
目的は、モチベーション向上の先にある業績アップ
モチベ―ション向上をテーマに記事を書きましたが…
あくまでも目的はモチベーション向上の先にある業績アップです。
モチベーション向上の先にある成果が意識されないと、意欲は高くても成果が出ない、という状態に陥ります。
経営戦略と人材戦略がしっかり紐づいているかどうか…
そこに会社の命運がかかっています。
モチベ―ションに関する方策を立てる前に、自社の理念・風土・戦略を礎に、どのような人材を肯定的にとらえるか、というコンセンサスを醸成することが重要になります。
その上で、以下のチェックポイントで、社員のジョブ・デザインを見直していきましょう。
- 現場における個人の仕事は、事業の方針や戦略とつながっているか。
- 社員の仕事は、多様な技術やスキルを必要とし、自律的に責任を果たせる仕事か。
- 組織の利益に貢献していると実感がもてる仕事か。
- 社員の貢献を適切な方法でフィードバックしているか。
マネジャーの皆さまにおかれましては、自身の職務で多忙を極める中、社員一人一人の仕事に目を向ける時間も限られると思います。
しかし、この問題を放置すると、チームの業績は横ばいか下降するのみ、という事態を招きます。
そうなる前に、まずは 職務の見直し という視点で、現場を見渡してみてください。
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