そのプライドが学びを止めている ー 50代から始める「アンラーン(学びほぐし)」
人生100年時代…
キャリアの折り返し地点を過ぎたアラフィフにとって、リスキリング(学び直し)は避けて通れないテーマ。
いっぽうで、50代前後になると最近、
新しい知識が頭に入ってこない…
リスキリングも、面倒に感じる…
もしかして、燃え尽きかも?
こんな心配を抱く方も少なくありません。
しかし実はこれ、年齢や意欲の問題ではなく、
これまで積み上げてきた「経験知」が、学びの壁になっていることも多い。
リスキリングと聞くと、多くの人は
「何を足すか(どの資格を取るか、何のスキルを学ぶか)」 に目を向けがちです。
しかし、新しいことを学ぶ上で本当に大切なのは、
いったん「経験知」を脇に置くこと
これまで正しいと信じてきた経験知があるほど、
新しい情報を無意識に「すでに知っているもの」として処理してしまうからです。
専門用語で「アンラーン(Unlearn:学習棄却)」と呼ばれるこのプロセスこそが、成熟した大人が次のステージへ進むためのカギを握っています。
そこで本記事では、
50代からでも新しい学びが無理なく入ってくる…
「思考のクセの緩め方」について
提案します
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「学び直し」といっても、いきなり資格取得を目指す必要はありません。
まずは肩の力を抜いて、「ちょっとカジる」ことから始めてみませんか?


なぜ、経験豊富な人ほど「新しい学び」につまずくのか


40代、50代と年齢を重ねると、誰しも仕事における成功体験や、「勝ちパターン」を持っています。
それは私たちの誇るべき財産。
しかし、皮肉なことに、その「過去の成功体験」が、
新しい時代の学びを阻害する
最大の壁になることがあります
50代の学び直しを邪魔する「無意識のバイアス」


「50代 学び直し」に関心を持つような意欲的な人ほど、自分の経験に自信を持っています。
新しい知識に触れたとき…
ああ、それは昔やった
○○と同じことでしょう?
その件については知っている
こんなふうに、無意識に過去のデータに当てはめて考えるクセは、ありませんか?
心理学では「既有知識の干渉」と呼ばれますが、
過去の知識がフィルターとなり…
「わかったつもり」になってしまうのです
このフィルターが分厚いほど、物事の本質は見えにくくなります。
脳のハードディスクは満杯状態


私たちの脳内にある「記憶領域(ハードディスク)」の容量も、限りがあります。
新しいソフトをインストールできないパソコンのような状態。
厄介なのは、
容量を圧迫しているのが「不要なゴミ」ではなく…
過去においては
「正解」だったデータという点です
- 「電話で話すのが誠意」という営業ルール
- 「残業こそがやる気の証」という働き方
かつてあなたを成功させたこれらの「優秀なアプリ」も、OS(時代)が変われば動きません。
それどころか、
新しいシステムの邪魔をし、エラーの原因になってしまうことさえあります。
「頭が固くなった」のではありません。
昔の正解を大切にするあまり、今の「正解」が入るための「空き容量(余白)」がないだけなのです。
「アンラーン」とは、記憶を消すことではない


「学習棄却(アンラーン)」と聞くと、これまで積み上げたキャリアを否定し、ゼロに戻すようなイメージがあるかもしれません。
しかし、それは誤解です。
まずは…
「アンラーン」が注目されている背景や意味を明らかにしていきましょう。
なぜ今、「アンラーン」が注目されているのか


「アンラーン」が注目される理由は…
「ルールの賞味期限」が
極端に短くなったからです
かつては、一度覚えた「必勝パターン」で10年、20年と戦えました。
しかし今は、数年で常識がひっくり返る時代。
- 足で稼ぐ営業から…
データで動くインサイドセールスへ - 年功序列の組織から…
ジョブ型のフラットな組織へ
過去の地図を頼りに、未知の土地(デジタル社会)を歩けば、迷子になるのは当然。
だからこそ、
古い地図を一度手放す「アンラーン」が、50代の必須スキルとして注目されているのです。
アンラーンの正しい意味=「学びほぐし」


アンラーンとは、決して知識を忘れることではありません。
今の自分を縛っている前提を
「疑う力」のことです
- ❌ 過去の経験をすべて捨てる
- ⭕ 過去の経験の中から「今は役に立たないもの」を選別し、手放す
いわば…
昭和・平成のOSを、令和版にアップデートする作業。
たとえば…
マーケティングの世界
「プロとしての美学」を持ち、
かつては1ミリの妥協も許さず完璧なクリエイティブを追い求めた…。
そんな経験豊富な人ほど、SNS時代の「素人っぽくてもリアルな共感」が評価される潮流に戸惑うかもしれません。
しかし、ここで
「こんなのプロの仕事じゃない」と否定せず…
自身の美学を脇に置いてみる
泥臭い現実を受け入れることで、過去の経験と新しい感性が融合し、今の時代に響く成果を生み出した事例も多い。
世界ブランドへと成長した「獺祭」もそのひとつ。
旭酒造の桜井博志氏(現会長)は、洗米や麹づくりといった「泥臭い」現場作業を出発点にしながらも、その職人技・吟醸づくりのノウハウを徹底的に標準化・数値化し、再現可能な形にしました。
過去を否定せず、いったん脇に置き、
今の環境に合わせて組み替える
これこそが、アンラーンの正体なのです。
一番の難敵「プライド」を無力化する技術


アンラーンを実践する上で、最大の障壁となるのが「プライド」。
とはいえ…
「プライドを捨てよう」と言われても、そう簡単にはいきません。
これまで私たちを支え、戦わせてくれたのは、紛れもなくその自負心だからです。
そこで提案したいのは、物理的・技術的に…
「過去の自分が顔を出さない仕組み」
を作ってしまうことです
思考のクセを封じる「NGワード設定」


経験豊富な人ほど、新しい話を聞いた瞬間に、脳内で無意識に変換を行っています。
ああ、要するにアレのことね
昔でいうところのコレだよね
この変換機能こそが、学びを止める元凶。
そこで、今日から次の言葉を「使用禁止(NGワード)」に設定してみてください。
- 🆖 要するに…
複雑な新しさを、過去の単純な枠に押し込めてしまう - 🆖 昔は…
今の文脈を無視して、過去の基準を持ち出してしまう - 🆖 …知ってる
相手の説明を遮り、情報の更新を止めてしまう
口癖を変えるだけで、思考は強制的に矯正されます。
「要するに」と言いそうになったら、
グッと飲み込んで…
具体的には? と聞き返す
これだけで、脳は「過去の検索」から「未来への学習」へとモードを切り替えます。
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「最近、周囲に厳しくなっていないか?」と不安な方は要注意。
思考の柔軟性を保つための「特効薬」もあわせてチェックしておきましょう。
「答えを持つ人」から「問いを立てる人」へ


もう一つの技術は、職場での「役割(スタンス)」を意図的にズラすことです。
50代は、どうしても「正解を教える人(Teacher)」の役割を求められがちです。
自分もそれを心地よく感じる。
しかし、アンラーンが必要な場面では、この役割が邪魔をします。
今日から、自分の肩書きを勝手に書き換えてみましょう。「部長」や「ベテラン」ではなく…
「インタビュアー」になったつもり
で若手や新しい技術に接する
- ❌ Teacherの視点: それは間違っている。正解はこうだ
- ⭕ Interviewerの視点: なぜその方法を選んだの? 背景にある変化は何?
「教えるプライド」は一度脇に置き、
「情報を引き出すプロ」としてのプライドを持つ。
これなら、自尊心を傷つけることなく、自然と新しい知識を吸収できます。
引き算の先にある「新しい自分」


多くの人は、キャリアの成熟を「知識や経験の足し算」だと考えています。
しかし、変化の激しい現代において、更新されない知識は、時として重荷になります。
アンラーン(引き算)の本質は、過去を捨てることではありません。
自分の中に新しい情報が入ってくる「隙間」を作り…
常に知識が入れ替わる「知の循環」
を起こすことにあるのです
目指すのは「物知りな長老」ではなく「最年長の新人」


50代が目指すべきゴール設定を変えてみましょう。
かつて尊敬されたのは、何でも知っている「生き字引」のような存在でした。
しかし…
検索すれば一瞬で答えが出る今、単なる知識の蓄積に価値はありません。
今、組織が求めているのは、
豊富な経験を持ちながらも…
新しいツールや考え方を面白がる
最年長の新人 オールド・ルーキーです
- 経験はあるが…
手垢のついた正解は押し付けない - 誰よりも失敗の怖さを知っているが…
誰よりも軽やかに挑戦する
この「矛盾する魅力」を同居させられるのは、アンラーンを経て、プライドと謙虚さのバランスを知った大人のみ。
これこそが…
AIにも若手にも代替できない
50代の最強の生存戦略です
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若手からも時代からも受け入れられる「愛されるおじさん」になるために、今日から変えられる具体的な行動指針はこちらです。
明日から変わる「逆・メンター」のススメ


では、どうすればその状態になれるのか。
今日からできるアクションとしておススメなのが、
年下の師匠(メンター)」を作ること
職場の20代、あるいは自分の子供でも構いません。
最近 流行りのあのアプリ…
使い方を教えてくれない?
…と頼んでみてください。
そして、スマホを渡して「完全に生徒になる時間」を設ける。
ここでのポイントは、途中で
昔でいう○○だね
…と知ったかぶりをしないこと。
操作に戸惑う自分、若者のスピードに驚く自分を、面白がってみてください。
「教わる」という行為は、
脳にとって最高のマッサージ。
凝り固まった上下関係の筋肉がほぐれ、その空いたスペースに、驚くほど新鮮な情報が流れ込んでくる快感を味わえます。
「アンラーン」は、一朝一夕にできるものではありません。
長年連れ添った自分自身のプライドや思考のクセと向き合う…
少し痛みを伴う作業でもあります
しかし、過去を手放した先にこそ、これからの人生を豊かにする新しい余白が生まれます。
まずは深呼吸をして、
心の中の不要な荷物をひとつ、下ろしてみませんか?
























































