完璧より完了|60点で出す「完了主義」という仕事の進め方
資料作成に時間がかかりすぎて、
いつも提出は、期限ギリギリ…
Slack通知が鳴るたびに、
「できた?」の文字を探してしまう…
そして何より、中途半端なものを出して、
「できない人」だと思われたくない…
そんな気持ちが、
手を止めてしまうことはありませんか?
もしそうなら、
あなたは真面目で、責任感の強い人です。
けれど、その「困り感」の正体は、
あなたの強みである「完璧主義」かもしれません。
そこで今回のテーマは、
完璧主義の反対にある「完了主義」
完了主義とは、「完成度」よりも
「完了回数」を優先する仕事術のことです。
完璧に仕上げてから出すのではなく、
まずは60点で一度出してみる。
実はこの考え方…
仕事の質を高める最短ルートなのです。
シリコンバレーでは
Done is better than perfect
(完璧より、まず終わらせろ)
…という言葉が広く知られています。
未完成のまま出すことは、逃げではありません。
むしろ、成長のスピードを上げる一つの戦略。
その理由と、具体的な実践ステップを解説します。

なぜ完璧主義は「先延ばし」を生むのか

やる気が出ないから
先延ばしになる
そう思っていませんか?
実は、その背景には「完璧にやらなければ」という心理が隠れています。
「準備不足」という言い訳を用意していませんか?

もっと情報を集めてから
構成を完璧にしてから
その一方、心の奥底では
「時間がなかったから仕方ない」という言い訳を用意していないでしょうか?
心理学ではこれを
「セルフ・ハンディキャッピング」と呼びます。
【セルフ・ハンディキャッピング】
あえて自分に時間不足というハンデを課すことで、失敗した時に「能力が低いわけではない」と自尊心を守ろうとする防衛反応のこと
完璧主義とは、実は…
「傷つきたくない」という心の現れ
その弱さをちょっと認める。
すると、打開策が見えてきます。
締め切り前の「焦り」は脳を麻痺させる

でも、追い込まれた方が集中できる。
イザというときは、
火事場の馬鹿力で…
実はこれ、科学的には幻想です。
実際は、焦るばかりで頭が回らなくなる。
脳が「過緊張状態」になり、認知機能が低下するからです。
ヤーキーズ・ドットソンの法則でも…
人は適度な緊張感でパフォーマンスが上がりますが、過度なプレッシャー(恐怖)がかかると創造性は失われます。
完璧主義による「ギリギリの着手」は、
あなたの本来の能力を殺してしまう非効率な方法なのです。
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「最初の一歩が踏み出せない」という方には、やる気に頼らず脳を動かすテクニックもあります。詳しくは👇の記事をご覧ください。
60点で出すことは、経済的にも合理的


ビジネスにおいて「60点で出す」ことは、
手抜きではありません。
むしろ、限られた時間で成果を出すための
「投資対効果(ROI)の最適化」です
80%の価値は最初の20%で決まる


仕事には「パレートの法則(80:20の法則)」が働きます。
【パレートの法則】
成果の80%は、費やした時間の最初の20%で決まるという法則
資料作成で言えば、
骨子や主要データが決まった「初期段階」で、価値の大半は決まっています。
残りの80%の時間を使ってフォントやレイアウトを微調整しても、成果物の価値はそれほど上がりません。
残りの20%で、コストが跳ね上がる


さらに恐ろしいのは、
質を80点から100点に近づけるための労力は、
指数関数的に跳ね上がるという事実です(限界収穫逓減の法則)。
【限界収穫逓減の法則】
投入(努力・時間・お金)を増やし続けても、それに見合うだけの「追加の成果」がだんだん得られなくなっていくという法則
完璧を追究して最後の数ミリのこだわると、
膨大な時間が費やされてしまいます。
それよりも、60〜80点の段階で一度提出し、
次のタスク(別の20%の努力)に取り掛かる。
このほうが、
トータルの生産性は
圧倒的に高くなります
「量」が「質」を生むメカニズム


とはいえ…
量を優先したら質が落ちるのでは?
そう不安に思うあなたに、
新たな視点をご紹介します。
完璧主義は「理論」、完了主義は「経験」で勝負する


完璧主義者は、頭の中で「完璧な理論」を組み立ててから動きます。
一方、完了主義者は、
とりあえず動いてみて「経験」から正解を導き出そうとする。
最終的に高い質に到達しやすいのは、
経験を重ねる完了主義です
AIの進化の仕組みも、実はこれと同じ。
完璧な理論からではなく、
反復から精度を上げていく方法を採用しています。
陶芸クラスの実験:量グループ vs 質グループ


ある陶芸教室で行われた実験があります。
『アーティストのためのハンドブック![]()
生徒を「作った作品の数(量)で評価するグループ」と、「最高の出来栄えの作品1つ(質)だけで評価するグループ」に分けました。
学期末、最も優れた芸術作品を生み出したのは「量グループ」。
質グループが「完璧な理論」を考えて手が止まっている間に、量グループは手を動かし、失敗し、改善するサイクルを何十回も回しました。
その結果、技能が劇的に向上し、
結果として「最高の質」に到達したのです。
決定づけたのは「才能の差」ではありません。
試行回数の差です
能力を卑下する前に、回数をこなす


脳科学的にも、
反復は神経回路を強化すると言われています(ヘブ理論)。
「自分には才能がないかも」と悩む前に、
まずは十分な回数の試行と
フィードバックを重ねることが重要
その泥臭いプロセスこそが、
質を高める確かなルートです。
早く出す人が評価される心理的理由


完了主義は、単に仕事を早く終わらせるための技術ではありません。
「いつ出すか」は、
あなたの評価を左右する
重要な要素でもあります
人は、成果物の「質」だけでなく、
その出し方やタイミングからも印象を判断しているからです。
そこには、いくつかの心理効果が働いています。
アンカリング効果:議論の主導権を握る


会議で最初に出された案がその後の基準となり
議論が進んでいった経験はありませんか?
たとえば…
- 最初に「A案」が出れば…
➡ 自然とAを前提に議論が進む - 最初に「売上10%増」と言われれば…
➡ その数字を起点に話が動き出す
このような現象を、
心理学では「アンカリング効果」と呼びます。
最初に提示された数字や方向性が、
無意識のうちに「基準」として固定される現象です。
議論の「出発点」を作るのは、
最初にたたき台を出した人です
「最初に出す」という行為は、
それだけで場を主導する立場に近づく、ということ。
結果として、
周囲の評価も変わり始めます。
資料は MVP(Minimum Viable Product)でいい


スタートアップの世界には
「MVP(Minimum Viable Product)」という考え方があります。
完璧な製品を作る前に、
必要最小限の形で市場に出し、反応を確かめる手法です。
いきなり完成品を作らない理由は、
「市場の正解」は出してみないと
分からないからです
あなたの資料も同じです。
上司に見せるのは、
最終版である必要はありません。
方向性を確認するための「試作品」でいい。
これにより、
- 進捗が見えることで上司は安心
- あなたは大きな手戻りを回避
結果として、
信頼はむしろ積み上がっていきます。
「完了主義」を実践する3ステップ


では、明日からどう動けばいいのか?
完了主義は、気合いの問題ではありません。
「仕事の進め方」を変えるだけです
ポイントは、
完成までを一気に走らないこと。
仕事を3つの段階に分けて進めます。
① 20点ですり合わせる


着手してすぐ、
この方向性で合っていますか?
…と確認する。
ここでの目的は「完成」ではなく、
認識のズレを早期に見つけることです。
ズレは後半になるほど修正コストが高くなります。
だからこそ、最初に小さく確認する。
② 60点で提出する


ドラフト版ですが
…と前置きし、 未完成のまま見せる。
60点で出すことで、 あなた一人の視点から、
「チームの視点」へと進化します。
思考は、外に出した瞬間から磨かれ始めます。
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そもそも上司に質問するのが怖い、丸投げされて困っているという方は、スムーズに判断を仰ぐための「質問フレームワーク」を使ってみてください。
③ フィードバックで100点にする


上司の意見を取り入れ、仕上げる。
この時点では、
方向性はすでに共有されています。だから…
修正は「作り直し」ではなく
「調整」になる
結果として、スピードも質も両立できるのです。
このサイクルを回すことで、仕事は「孤独な作業」から「共同作業」に変わります。
その変化が、速さを生むのです。
AIも「未完成」からスタート


数字の最終チェック、契約書の確認、
ここぞという時のプレゼン。
そういった場面では、
あなたの完璧主義は、最強の武器になります。
大切なのは、
完璧主義の
使う順番 と 使う場所 を見極めること
特に未知の仕事や未経験の領域では、
最初から完璧を目指すよりも、まずは一度かたちにしてみる。
現実のフィードバックを受けながら磨いていくほうが、質も高まります。
AIもまた、
試行と修正を繰り返すことで進化してきました。
最初から正解を知っていたわけではありません。
出して、学び、修正する。
その積み重ねが精度を上げていったのです。
あなたの仕事も同じです。
いま抱えているその仕事、
まずは60点で出してみる。
その一歩が、
仕事の重さを軽くし、成果への距離を確実に縮めてくれます。
完璧を目指すな、ではありません。
完璧に至るまでの順番を
変えるだけです




















































