コーチングの実際「どのようなやり取りが行われているのか」を知りたい、という声が研修会でも多く聞かれます。
そこで、実践のイメージをもてるように…
実践例を…
導入段階・展開段階・終末段階に分けて記事にしています。
今回は、「導入段階の実践例」になります。
コーチングの実践に向けて、皆さんの参考になれば幸いです。
以下の設定で、対話の例を書きます。
- A課長のもとに、新任のB係長が配属された。
- B係長は将来を期待されている人材である。
- これまでは営業の第一線で活躍してきた。
- いわゆるプレイヤーとしての経験は十分にある。
- 一方で、マネージャー(管理職)としての経験はない。
コーチングセッション 1 ―ファーストコンタクト―
簡潔に同意を得てサポートを始める場面です。
毎日熱心に仕事に向き合ってるね。
随分忙しそうに感じるが…
何ぶん初めてのポジションなので、目の前の仕事をこなすのに精一杯です。
うちの会社は、社是として社員を「会社の財産」と見ていることは、知ってるね。つまり、君の成長は会社の発展とイコールと考えてほしい。
そこで、私もこれから君のキャリアップのサポートをしていきたいと思う。
ありがとうございます。ぜひ、お願いします。
忙しいとは思うが、定期的に時間をとる方法はないだろうか?
月末の火曜日に、この部屋にうかがいます。
時間は課長の都合に合わせます。
※ 上図の パーパス についての詳細は、以下の記事へ…
コーチングセッション 2 ―テーマ設定―
❶ テーマの形成
仕事観を把握する場面です。
約2週間しか経っていないが、係長として仕事をしてきて、うまくいっていること、うまくいかないことが、ある程度はっきりしてきたかね?
実は、前回と同じく目の前の仕事をこなすだけで終わっています。
何を目指して仕事をしているのかさえ、わかっていません。
係長に昇進したとき、これからは何を大切にして仕事をしていこうと考えていたかい?ちょっとふり返ってみようか。
各項目の点数の関係について説明してくれないか。
これまで私は仕事に対してやりがいを感じてきましたし、大切にしてきました。
それは、現在も変わりません。
努力した分、成果もあげてきたという自負もあります。
そして、成果を上げるためには営業に関わるスキルも大切だと考えて、自分なりに磨いてきたつもりです。
係長に昇進したことで、その職位に求められる能力を高めたいと思っています。
今は、このことが一番大切だと思います。
そのためには今後はマネジメントスキルを身につけることが大切だと考えます。
また、異動にともなって、部署内で良好な人間関係を築いていきたいと考えています。
係長の仕事は部下との関係性がとても重要だと認識しています。
一番大切にしたいことはマネージャーとしての能力を高めることで、今後はこのことにやりがいを求めていきたいということだね。
そのために、マネジメントスキルを身につけたり、部下との関係性を深めたりすることを大切にしたい、と理解していいかな?
仕事観の構造
❷ テーマの選択
自己評価を仕事観に重ねてテーマの選択肢を探る場面です。
このような仕事観に対して、今度は現時点の自己評価をしてみよう。
仕事観と自己評価で一番差が大きいところについて説明してくれないか。
これまで、個人としての実績はある程度上げたと思っています。
しかし、現在、管理職になった私に求められている責任は十分に果たせていません。やはりこのことが、今の私の一番の課題と思います。
課題の項目「マネージャーとしての適性」の自己評価は「3」だが、ひとつ上の「4」の評価とは、何が違うかな?
「3」と「4」の違いは、今直面している課題なんですが … 部下との打ち合わせや相談にのる時間を確保できているかどうか、という点です。現在、私が指示をするばかりで、一方通行になっています。
そのせいか職場の人間県関係がギスギスした感じです。
相談にのる時間がとれない原因は?
大切な顧客には私が直接営業に回っているからです。
どんな理由から?
部下の判断ミスによって大切な顧客を失ったら、会社に損失を与えてしまうと恐れるからです。
業績圧力を感じていると思うが、一方で組織が機能不全に陥ると会社全体に影響を及ぼす。そういった中で、部下に任せられる状況をつくるためには、どんなアイデアが考えられるかな?明後日また時間をつくるので、いっしょに考えよう。
❸ テーマの決定
テーマを決定し、具体化する場面です。
アイデアとしては…
- 案件を担当する部下にいち早く、プロジェクトに参画してもらう(巻き込む)。提案フェーズの早いうちから…
- 以下の3点を実施し、部下に任せられる状況を生み出す。
- 大切な顧客への対応に関する教育・指導を適宜行う
- 判断基準や考え方、ナレッジなど、マネージャーとしての自分の思考ロジックを再現性がある方法で組織内で共有する
- 組織のコンディションや現在地を測定・分析し、共有する
これらの時間をどのように確保していくのかね?
これらの時間を別個に確保するわけではありません。情報とともにナレッジの共有を図るなど、新たな視点をもって定例会に臨みます。
また、打ち合わせで済むものがないか検討し、部署全体で会議の頻度を見直して、開催回数を適正化します。
さらに、社内のシステムで確認できる資料は各自でアクセスするなど既存システムの効率的な運用を進めます。
軌道に乗るまでの期間をどのように見積もっているのかい?
2か月を想定しています。
導入のポイントは、部下の「納得感」「自覚の深化」にある
今回は以下の記事の実際を会話形式で示しました。
セッションのスタートは同意を得ることです。
対象者が一定のポジションにあり、現時点の目標もしくは課題がはっきりしている場合は、シンプルに進めて結構です。
テーマの形成・テーマの選択は、納得感や自覚を深めることが重要。
工夫としては…
「見える化」が効果的。
導入段階の最後は、具体的な行動に落とし込むことができるようにサポートします。
今回は記事量の関係で詳細は割愛しましたが、「SMARTの原則」に則って…
- S: Specific = 具体的
- M: Measurable = 測定可能
- A: Attainable = 達成可能
- R: Realistic = 現実的
- T: Time‐Oriented = 期限つき
という5つの要素を満たした行動目標にすると、展開段階で確認しやすくなります。
次回は、展開段階の実際例を予定しています。
参考になる書籍を紹介します。コーチングの原点でもあります。
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