毎年入社してくる新入社員。
迎える先輩は、新人のロールモデルになります。
そのロールモデル「先輩」の実力が明らかになる場がスピーチ。
後輩を含め、聴衆の期待と注目を集める局面、
多くの人は、こう思うはずです…
聴衆の心をつかむスピーチをしたい
先輩ならば、「後輩からも実力を認められたい」という下心も正直ある。
このような向上心(+下心)のある方に向けて、今回は…
スピーチ力の向上について解説
スピーチの成否は準備で決まります。
実践をとおして準備の過不足を知り次回に活かす
ネタの引き出しを増やしていく
…といった反復でスピーチは洗練されていきます。
やがては、即興スピーチもできるようになります。
プレゼンも「伝える」「共感を得る」という点ではスピーチと同じですが、プレゼンにはさらに、相手を「動かす」という目的が加わります。
これがスピーチとプレゼンの違い。
なお、プレゼンでアピールする方法は、以下の記事で解説しています。
必要に応じて、ご参照ください。
簡単に内容を知りたい方は Instagramへどうぞ…
https://www.instagram.com/mitsuya_biz
スピーチの準備のすすめ方:3つのポイント
スピーチ力はもって生まれた才能ではなく、努力によって開眼します。
話すのが苦手と思っている人も、ちょっとしたコツを取り入れて実践を積めば、確実に上達する。まずは準備に重点を置いて、「スピーチ上手」を目指しましょう。
スピーチの準備には、
「内容」と「伝え方」の2つがあります。
- 伝えたいことは何か
- どんな言葉で表現するか
- どんな順序で伝えるか
- どんな材料を使って説得力を高めるか
…といったことが「内容」にあたります。
「内容」については…
『話をつくる手順』のなかで解説します。
聴衆の耳目を集めるには…
話の速度や声のトーンの変化のつけ方にも
注意を払う必要があります。
…これが「伝え方」の中身。
「伝え方」については…
『伝え方を磨く』のなかで解説します。
目線やジェスチャーも大切ですが、これは経験とともに上達します。
重要度が高いのがオープニング
聴衆は、最初の30秒で話がおもしろいか、おもしろくないかを判断するとされています。
つまり、30秒以内に聴衆を引きこむ工夫が必要。
この、聴衆を引き込むテクニックについては…
『オープニングの準備』のなかで紹介します。
ポイント1:話をつくる手順
スピーチの要件は、伝えたいことが明確でわかりやすく、一貫性があることです。
説得力を高める事実や具体例があれば、さらによくなる。
手順としては、以下のとおり…
- 話の中心(コア)を明確にする
- 話の順序(プロット)を定める
- 根拠となる事実(ファクト)をピックアップする
- 経験や具体例を盛り込む(ストーリー)
❶ 話の中心(コア)を明確にする
まず、スピ-チ全体をつらぬくテーマ:「もっとも伝えたいことは何か」を決めます。
メッセージの中心(コア)になるので、印象に残るように短く覚えやすい言葉で表現します。(キャッチコピーは13字前後が目安)
たとえば、本記事の中心メッセージは『スピーチの成否は準備で決まる』になります。
スピーチ全体のキーワードとしてくり返しアピールし、聴衆に印象づけます。
解釈の余地がないほどに言葉を絞ることがポイント。
❷ 話の順序(プロット)を定める
話の中心(コア)を聴衆に届けるには、話す順序を工夫する必要があります。
一般的には、結論→中身→結論の型。
急にスピーチを依頼された際は、この型を念頭に話せばよいでしょう。
しかし、まとまった時間が用意され、内容の充実が求められる場合は「中身」の部分に厚みをもたせることが必要になります。
そこで、中身を充実させる型を4つ紹介します。
OREO型
- OPINION:結論
- REASON:理由
- EXAMPLE:具体例
- OPINION:結論
…の順で展開する型です。
日本語では、「○○です。なぜなら…。たとえば…。だから、○○なのです」という構成になります。
たとえば…
- 接客分野でもDXを推進すべき(結論)
- 利便性の向上が顧客満足度を高め、売上に大きな影響を与える(理由1)
- 人手不足の問題も同時に解消できる(理由2)
- 接客ツールの活用事例と効果(具体例)
- 業績回復に向けた喫緊の対策は、再現性の高い接客DXの推進(結論)
このように中身を厚くし、説得力を増すように構成します。
PEEL型
- POINT:結論
- EVIDENCE/EXAMPLE:根拠・具体例
- EXPLAIN:説明
- LINK To point:結論にリンクする
…の順で展開する型です。
たとえば…
- 指示を出すときは、具体的な行動を示すことを心がけましょう。(結論)
- たとえば「なるべく早く」では、今日中なのか、明日までなのかが曖昧です。(具体例)
- 「明日の正午までに」など、言葉の解像度を上げたほうが相手も動きやすくなります。(説明)
- 人を動かすには具体的な行動を示して指示しましょう。(結論)
「3つ」の要素型
結論→中身→結論の「中身」の部分で、3つの要素を提示する「型」です。
たとえば、結論を述べて、「その理由は3つあります」と説明する方法。
理由だけでなく、ポイント・方針・方向性(Vision、Plan、Support)・課題・時間軸(過去、現在、未来)・場所など、要素は結論とのつながりに応じて変わります。
世界のリーダーも「3つ」の要素で方針を語ります。
たとえば、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏は『顧客第一主義』を企業理念に掲げ、「品揃え」「利便性」「低価格」の3点を重視。
中国の起業家、アリババのジャック・マー氏は、成功の要素に「EQ(心の知能指数)」「IQ(知能指数)」「LQ(Love Quotient、愛の指数)」の3つを示しました。
「3」は、多すぎず少なすぎない、ちょうどよい「マジックナンバー」と言われます。
ただし、いつも「3」で示すと「また3つかよ」と飽きられてしまうので、使用頻度は絞りましょう。
お悩み解決型
「Problem Solution Fit(問題─解決法)」といわれ、歴代アメリカ大統領も多用するホワイトハウス流の「黄金のフレームワーク」です。
また、通販番組のシナリオとして有名です。
なかでも有名なのは、ジャパネットたかた創業者の髙田明氏。
トークの構成としては…
- 最近物忘れがひどくなった。そんな声にお応えして、今日はこんな商品を準備しました。
- このボイスレコーダーは、ボタンをひと押しして話すだけで声が残せるので、操作も簡単。
- お値段はなんと、4980円、金利・手数料はジャパネット負担!
- 本日13時までのお申し込みの方に、高性能集音マイクとイヤフォンをおつけします。
最後に、たたみかけるようにお得感を視聴者に訴え、購買意欲を掻き立てます。
課題やお悩みなどの「問題」を提起し、その解決法を示すという展開手法は、価値提供する場面や新たな方針を打ち出す際に有効です。
❸ 根拠となる事実(ファクト)をピックアップする
❸は、特に社内外のプレゼン(提案)で必要な内容です。
提案の根拠となる事実は、メッセージとセットで考えます。
事実より先にメッセージや流れを決めて、説得力のある事実をあとからピックアップするとスピーチがブレません。
たとえば、プレゼンを使った提案を次のように組み立てる…
- 顧客満足を上げる施策を打つ必要がある(提言)
- 来客者の減少は接客接遇が原因(原因分析)
- 接客接遇の研修実施(提案)
この構成に沿って次のように事実をピックアップする…
- 来客者数の推移と顧客満足度の複合グラフ
- 不満足要素のグラフ
- 研修効果や実績
そして、次のように口頭表現に直していきます…
- 来客者数と顧客満足度には高い相関が見られます。この結果から言えることは…
- では、お客様はどんな点に不満を感じているのか?不満要素の現状を調べたところ…
- そこで、改善策として接遇研修の実施を提案します。研修効果としては…
このように、メッセージと流れ→事実(ファクト)→スピーチ原稿という手順で準備を進めます。
❹ 経験や具体例を盛り込む(ストーリー)
事実ばかりを並べると、聞き手の関心は離れていきます。
経験談や価値観の変容などのストーリーを盛りこむことで、飽きずに聞いてもらえます。
特別な物語を用意する必要はありません。
スピーチの内容にかかわりのある個人的な経緯・経歴あっても、聴衆はそこに「人間らしさ」を感じ、親しみをもつものです。
とくに、ビフォー・アフターのある話は聞き手の関心を呼びます。
たとえば…
【 Before 】
これまで私は人前で話す場から逃げることしか考えていませんでした。
人前に出ると手が震えて、マイクを落としそうになったこともあります。
でも…
つづけて…
【 After 】
今ではスピーチのプロ。違う自分に変身したみたいです。
どうして「変身」できたか、これから その理由をお話しします…。
このように、「変化」にフォーカスした話を聞くと、人はそのプロセスを知りたがります。
時系列で過去の記憶を呼び覚まし、そのときに見たこと・聞いたことを思い出す。
そして、感じたことや、見方・考え方の変化を織り交ぜて表現すれば、物語になります。
ファクトとストーリーの割合、内容の「くだけ」具合は、聴衆層やテーマによって調節します。これも準備と経験によって磨かれていきます。
ポイント2:伝え方を磨く
❶ 話し方の速度
すらすらと話せばクレバーな印象を与えますが、聞き手の記憶には残りません。
相手を説得したい場合は、あえて早めに。
重要な言葉は、あえてゆっくり、を意識します。
さらに、重要な言葉のまえに、ちょっと「間」を置く。
このように変化をつけると、聞き手も「ここがポイントだな」と認識できます。
前述のジャパネットたかたの髙田明氏も、この話術の実践者。
スピーチ前に、これらを意識して練習しましょう。
グンとスピーチ力が上がります。
❷ 声のトーンの変化
声のトーンの変化は、「新たな展開に移るぞ」という合図になります。
「心の準備」ができるので、聞き手にもわかりやすい。
トーンの転換点は、「そこで」「しかし」「なぜなら」「つまり」などの接続詞です。
話の中心(コア)を述べる前にくる接続詞で変調、と覚えておきましょう。
これもスピーチ前の練習で、すぐ身につくテクニックです。
ポイント3:オープニングの準備
スピーチのオープニングは、見た目の「第一印象」にあたります。
人は、第一印象がいつまでも残り続ける「初頭効果」という影響を強く受けます。
したがって、スピーチのオープニングは、準備のなかでも重要度が高い。
おもしろそう、聞くに値する、といった「第一印象」を与える工夫が必要になります。
避けたいのは、聞き手をうんざりさせるオープニング。
回りくどい挨拶から入るパターンが代表的です。
Unpleasant pleasantry「非礼なる礼儀」といわれ、丁寧さが厭われるケース。
では、聞き手の心をつかむオープニングとは、どんな入り方でしょうか?
そこで、聞き手の心をつかむテクニックを4つご紹介します。
準備の際にお役立てください。
❶ ストーリー
いきなりストーリーで始めます。
前述のとおり、定番はビフォー・アフターがある話。
「困難の時期から一転、現在は全く違う状況にある。その理由は何か?」といった、話の前後のギャップを埋めたいと思わせるような流れです。
人はギャップがあればあれほど、その過程を知りたいと思います。
生活習慣病を運動によって改善した、口下手な私がスピーキングのプロになったなど、話の展開が気になってしまうストーリーを展開し、聞き手の心をつかみましょう。
失敗談もビフォー・アフターものにできます。
私がこれほど有能だったから成功した、ではストーリーになりませんが…
「3度の5度も起業に失敗、しかしそこから学んだことを活かして現在は6,500人の従業員を抱える企業を率いています。私が失敗から学んだことは…」となれば物語になります。
実力者のスピーチを聞く折に、ストーリーが出てきたら、ちょっと気をつけてチェックしてみてください。ビフォー・アフターがある話が多いことに気づきます。
マネできる点は自身に取りこんでいきましょう。
❷ 質問
ハッとするような質問から始める方法です。
問いかけられた参加者は、自問して話に引きこまれやすくなります。
たとえば…
人類が直面したパンデミックのなかで、死亡率でいうとコロナは第何位になると思いますか?
新たな視点を示されたときに、人々は「ハッ」とします。
そして、今まで気づかなかった視点がもたらされる、という期待がふくらみ、話に引きこまれていきます。
❸ 驚きの事実
参加者に「驚き」をもたらす事実や数字をあげて、興味を引く方法です。
「❷質問」と同じく、誰もが知っていて体験もしているのに気づかなかった視点を指摘するほうが、驚きは大きくなります。
たとえば…
グローバリゼーションと資本主義の時代が始まった19世紀以降、パンデミックによる死亡率は顕著に低下しています。
コロナ禍の被害は甚大でしたが、人類がこれまで直面したパンデミックに比べると、その程度は決して大きなものではありません。
そして、人類が過去に直面した主要なパンデミックとその死亡率と死者数の図表を示す。
すると…
これから話がどのように展開し、どんな気づきがもたらされるか、といった期待がふくらみます。
❹ 引用
格言や著名人のいったフレーズ、あるいは詩などを引用する方法です。
話の中心(コア)が、
「職業の選択とは、人生を選択することだ」というメッセージであれば、
「かつてスティーブ・ジョブズは…」と切り出し…
私が続けられた理由はただ1つ、自分のやっている仕事を愛していたということです。
皆さんも愛するものを見つけなければなりません。
仕事でも恋愛でも同じです。
スティーブ・ジョブズ 2005.6 米スタンフォード大卒業式にて
…を引用する。
クロージングでも、格言や著名人のフレーズを引用するとオープニングとリンクし、聞き手の印象に残ります。
コアメッセージにつながるフレーズを引用するのがポイントです。
スピーチの達人は聴衆の顔を見て話を選ぶ
法学者 谷口真由美氏いわく…
いろいろなところでお話をする際、私は地域性や、オーディエンスのペルソナによって、まずは軽く「ジャブ」を入れて反応を見ます。
Forbes JAPAN 2021.12.03 「阪大『伝説の講師』がプレゼン資料を用意しないイケズな理由」 https://forbesjapan.com/articles/detail/44541
いわば「アイドリング」的な力の抜き具合で、オーディエンスの顔色を見て話を変える。
そうすると大体うまく行きますし、また聞きたい、と言っていただけます。
300人以上の大講義室を毎回、満員にする谷口氏は、スピーチの達人。
また聞きたい、といわせる練達者は、聴衆の反応を見ながら話を変えることも可能というわけです。
準備を重ねるなかで、ネタの引き出しが増えます。
そうすると、聴衆の反応に合わせて、別の引き出しからネタを取り出すことができるようになる。真摯に準備を重ねた成果をいえます。
その前提にあるのは、徹底した「相手ありき」の考え方。
スピーチの準備をする際は、「相手ありき」の視点を忘れずに…
スピーチの実践力を高めたい、磨きたい方には、スキルトレーニングの受講が早道。
オンラインで受講できる「コミュトレ」は、営業成績向上で年収アップ、転職の実現などの実績があり、おススメです。
話し方を極めたい方におススメの書籍は…
1000人を超えるビジネスパーソンのコーチ:岡本純子さん著作
忙しいあなたも、耳は意外とヒマしてます。
時間がない人におススメなのは audiobook!
ビジネスパーソンの主流は、耳読書。
読書効率がグンと上がります…
今後の生活資金に対する不安、健康不安、急な出費への備え…
そんな不安を安心に変える方法を記事にしました。
副業を考えている方は、どうぞご参照ください…
キャリアアップを目指しながら副収入もほしい…という方向けの記事です。