自分も隣の部下と同じような日常業務をこなしているような日本のプレイング・マネジャーの働き方は間違っている…
と海外から批判を浴びる、日本型プレイング・マネジャー。
しかし、業務量の増加や人手不足、業績目標達成などの諸事情から、マネジャーがプレイング業務を担う状況は、今や常態化しています。
今回は多忙なプレイング・マネジャーに向けて…
成果を生む
プレイング業務のデザイン
について解説!
できるマネジャーはプレイング業務をデザインしている
プレイング・マネジャーが避けるべき業務は、穴埋め的な業務や事後対応です。
これらに忙殺されるマネジャーには…
疲労感しか残りません
確かに部下の力量不足や人手不足といった事情もありますが、プレイング・マネジャーとして苦労しがいがあるような働き方をするためには、プレイング業務のデザイン が必要。
具体的には、以下の2つの柱で業務をデザインします…
「業務の俯瞰的理解と設計」「戦略的介入と成長支援」という2つの視点でプレイング業務をデザインすると成果に結びつきます。
詳細を解説します…
❶ 業務の俯瞰的理解と職務設計
1つ目の視点は、「業務の俯瞰的理解と職務設計」です。
プレイング業務に忙殺される要因は、職務の割り当て(ジョブ・アサインメント)に至るプロセスに問題がある場合が多く、これを俯瞰的に理解し、重点を踏まえて職務を設計することが大切になります。
「俯瞰的理解」とは、ジョブ・アサインメントに至るプロセスの全体像を理解すること。
以下は、ジョブ・アサインメントに至るプロセスモデルです。
まず、自身の❶~❻のプロセスを俯瞰し、職務設計を見直してはいかがでしょうか。
経営戦略との関連から目標を再定義(ジョブ・クラフティング)
職務のスケジュール・納期の想定
職務をリスト化し、優先度・重要度・困難度の高いタスクを明確化
成功のポイントの洗い出し
人材育成の視点から、対象社員のジョブサイズを設定
- ジョブ・アサインメント(職務の分配)
職務設計上、重要な項目は❸❹❻になります。
以下より項目を立てて解説。
1 職務をリスト化し、優先度・重要度・困難度の高いタスクを明確にする
3点(優先度・重要度・困難度)が重なるタスクが、マネジャーの業務を圧迫する(=ボトルネック)と予想されます。
職務遂行上のボトルネックを特定し、あらかじめ必要なリソースを確保しておきます(リソース・マネジメント)。
※リソース・マネジメント:プロジェクトを円滑に進めるために必要な資源(人材/資金/設備等)の効率的な管理
また、ここに知識や経験のある社員、または(人材育成の視点から)職務をとおして成長を期待する社員を割り当てることも重要です。
人材が不足している場合は、タスクを分散します。
優先度・重要度・困難度が重なるということは、職務遂行上の「壁」となるタスク。
この3点の重なりを特定し、速やかに対処して…
「成果に直結するタスク」に
注力できるように
デザインしましょう
2 成功のポイントを明確にする
例えば、次期プロジェクト…
成功させるポイント( = 成功の肝 )はどこか、明確に言えますか?
成果を出すマネジャーは、この「成功の肝」を特定することに長けています。
「重要度」の高いタスクと重なるケースがほとんどですが、マネジャーはさらにピンポイントで「成功への分岐点」を見極めることが重要です。
成功のポイントを明確にするのは、マネジャーの介入によってさらに成果を拡大させるためです。
具体的な場面としては、顧客のニーズに応じて臨機応変にソリューションを組み立て成約に結びつける、他部署や社外の関係者との協働によって顕著な成果が期待できる、などのタスクです。
- マネジャーの介入がないと期待する成果が望めない
- または介入によってさらなる成果の見込みがある
という場面を丁寧に洗い出します。
部下に、任せたと申し渡したタスクについては、成果の見通しがついていれば介入しません。進め方の確認を丁寧に行い、見守ります。
また、ここでも人材育成の観点から、部下と協働して仕事を進める方法が考えられます。
例えば、マネジャーが主となって仕事を進め、そのプロセスを手本として部下に観察させることによって、「成功の肝」を部下に植えつける…などです。
以上のイメージをもって、担うべきプレイング業務をデザインしていきます。
3 職務を分配する(ジョブ・アサインメント)
必要な知識・スキル・経験、適性や志向、時間的な制約などを考慮して、部下に仕事を割り当てます。
人材育成の観点から着目すべき点は「志向」です。
1on1ミーティングを実施している場合は、新たな職務を担うことよって得られる成長について、日ごろから話題にしておくとよいでしょう。
具体的には、1on1ミーティングをとおして、対象社員とストレッチ目標についてすり合わせしておく、などです。
このような「仕掛け」をしておくと、自ら「この仕事を担当したい」と手を挙げるなど…
部下は
主体的に行動し始めます
そのほか、仕事を任せるときには、その重要性や意義、価値を説明するなど意義づけること、権限移譲の境界を明確にすること、が重要になります。
以上のように、❶~❻のプロセスを理解した上で、❸❹❻に重点を置いて職務設計を進めます。
※ ストレッチ目標:背伸びしないと手が届かない難易度に設定された目標
❷ 戦略的介入と成長支援
成果を出すマネジャーは、付加価値が高まる業務を担っています。
つまり、チーム全体の進化のために業務を意図的に選択し、自身に割り当てている。
具体的には、戦略的介入と成長支援の2点です。
この2点について、次より解説。
1 戦略的介入をすべき2つのプレイング業務
マネジャーが介入すべき業務の1つ目は、自身のこれまでの知識と経験、ネットワークを活かすことによって高い成果が期待できる業務です。
つまり、自身の内側と外側のリソースを活かして、さらなる成果が期待できる業務。
マネジャーはそれまでの職業人生を通じて、部下に比べて豊かな知識や経験を持ち、他者とのネットワークも広い…
これらのリソースが効果的に成果に作用する業務をマネジャーが担うことで、チーム成果にプラスの影響をもたらします。
2つ目は、顧客との直接対話です。
顧客との対話をとおして、今求められているサービスや商品について新たなヒントを得ることができます。
また、マネジャーが率先して顧客に向き合っていること、顧客の変化に敏感であることは、チーム全体に顧客志向というスタイルを定着させます。
これらの目的を踏まえて、適宜、顧客と直接対話する機会を設けていきます。
以上の2点に着目してマネジャーが介入していけるように、プレイング業務をデザインします。
2 成長支援に関わる2つのプレイング業務
1つ目は、コンディション把握を目的とした部下との協働業務です。
部下のモチベーションの状態や仕事の進捗具合を把握しておけば…
- 部下にどのような支援をどれくらいすべきか
- 部下を励ますのか叱咤するのか
- この先どのような仕事を任せるべきか
…を考える材料になります。
これらの材料が、本来の役割であるマネジメント業務の基盤になります。
2つ目は、業務遂行能力向上を目的とした部下との協働業務です。
より効果的な仕事のやり方や進め方を部下に見せることによって…
効率的に
部下の成長を促進できます
また、上位職や重要度の高い顧客、業務遂行上必要なネットワークと接触する際は、部下を同席させます。このことより、部下の社内外のリソースやネットワークを拡充させることができます。
以上の2点を踏まえて、プレイング業務をデザインします。
部下の育成メソッドについては、以下の記事でも解説しています。
必要の応じて、ご活用ください…
プレイング業務は、人材育成と一体化させてデザイン
高いチーム成果を実現しているプレイング・マネジャーは、プレイング業務を実行するにあたってチーム全体に及ぼす影響を自らデザインしながら行動しています。
- 自らが担うプレイング業務を慎重に選択すること
- プレイング業務をチーム全体の進化のために戦略的に活用すること
これらのポイントを踏まえてプレイング業務をデザインし、実行することによって、チームは成長し、成果を手に入れることができます。
一方で、現場の状況により、本記事に示したプレイング業務に割く時間が十分にとれない、という場合も多いと思います。
しかし、人が育ち、チーム力が向上すれば、あなたが描くプレイング業務は実現できます。
つまるところ、プレイング業務は、“「ヒト」を育てる” ことと一体化させてデザインする、という結論にたどり着きます。
なお…
プレイング業務量は
業務全体の3割未満に
とどめてください
これ以上になると成果に結びつかない、というデータがあります。
社員から、うちの課長、GPS付けないと、どこで何してるのか分からねぇ…
と陰で言われるようになったら、要注意です。
段取り力を高めるの一案。
以下の記事で解説しています。
必要に応じて、ご活用ください。
本記事の関連書籍を紹介しておきます…
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