2023年版の「グローバルリスク報告書」の冒頭部分に、こんな記述があります。
2023年頭に世界が直面したのは不気味なほど旧知でありながら全く新たなリスクである。
「2023 グロバールリスクレポート」https://www.weforum.org/reports/global-risks-report-2023/
地政学上の対立、インフレショック、エネルギー危機といったリスクが掛け合わされることで複合的でより大きな影響を与える、というのが「新たなリスク」の内容です。
増幅されたグローバルリスクがいつ、どこに、どのような形で影響を及ぼすかわからない…
私たちは、どのような危機を想定し、どんな準備をすればよいだろうか?
今回は、2023年版の「グローバルリスク報告書」をもとに…
以下の3つのキーワードでリスク時代を読み解いていきます。
ポリクライシス:複合危機
ポリクライシスとは、個々のリスクが掛け合わさることで、複合的でより大きな影響を与える危機のことです。
世界を取り巻くさまざまなリスクは個別に存在するのではなく、お互いに影響をし合い、想定外のリスクへと姿形を変えて目前にあらわれる。
一例を挙げると、シリコンバレーバンクの経営破綻です。
投資家はインフレ沈静化で米連邦準備制度が利上げを近く停止すると期待していますが、その裏づけとなる証拠は今なお不十分。
以下は、レイ・ダリオ氏の不吉な予言です。
結果から原因へと遡ることはできます。
しかし、どのようなリスクがどのように掛け合わされてどこにどんな影響を与えるか、まだらに起こるリスク発生時においては予測困難。
こういったポリクライシスの加速がVUCA時代の混迷をさらに深める要因となるのはまちがいありません。以下はグローバルリスクレポートの中で紹介されたリスクの相関図。
ポリクライシスのイメージがつかめます。
令和4年に経済安全保障推進法(経済安全保障を推進するための法案)が制定されたのは、従前の想定を超えるリスクの顕在化が動機となっています。
「従前の想定を超えるリスクの顕在化」とはすなわち、日本も例外なくポリクライシスに直面しているということです。
リスクのある状態が常態化し、いつ世界的発展が急停止するかわからないという危機感が新たな政策を生んだと言えます。
リスクに対する自社防衛としては、さまざまな部署のレポートを総合して、自社にとってリスクになりそうな事象を絞り込む。そして、優先順位をつけて対策を練る、将来のリスクに備えてリソース配分を再設計する、といった動きが必要になります。
まずは、自社のリスクに対する…
「感度」を上げることに注力
部署間の垣根を超えて「知」を統合できる組織体制へと転換することが重要になります。
内閣府の政策、「総合知」活用の取り組み・活用事例もヒントになります。
ポータルサイトを紹介しておきます。https://www8.cao.go.jp/cstp/sogochi/index.html
また、不透明性の濃いリスクや問題の対応として、以下の記事を掲載しています。
バックキャスト思考がカギです。
ソーシャルグッド:社会に与える【よい】インパクト
ソーシャルグッドとは、社会の課題に対してよい影響を与える活動や製品、およびそれらを支援する姿勢のことを指します。
先例としては、アップル社のクリーンエネルギーへの移行が挙げられます。
アップル社は自社製品の製造をすべて再生可能電力でまかなうことを約束しました。
https://www.apple.com/jp/newsroom/2018/04/apple-now-globally-powered-by-100-percent-renewable-energy/
脱炭素化は不可逆の流れであることは明らかです。
企業経営においても、経済成長と環境保全の両立は避けられない重要課題となっています。
グローバルリスクレポート「長期的な重要度ランキング」に環境リスク(🔳緑色の帯)が上位10に6つ含まれていることからも、優先すべき経営課題として取り上げる時期に来ています。
以下にグローバルリスクレポート「長期的な重要度ランキング」を紹介しておきます。
2022年の「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、着々と法改正が進められています。
- 地球温暖化対策推進法(2021年改正)
- 第6次エネルギー基本計画(2021年閣議決定)
- 省エネ法(2022年改正)
省エネ法の改正で明文化されたのは、非化石エネルギーへの転換。
企業は太陽光発電の導入や非化石証書の購入、再エネ電力プランへの切り替えなどの対策が必要になります。
さらに、近年ESG投資(「Environment:環境」「Social:社会」「Governance:ガバナンス」)に対する関心も高まり、環境に配慮した製品作りやサービス提供が投資の重要な判断材料になりました。
脱炭素によるコストアップで厳しい状況に追い込まれる懸念もありますが、検討の際は脱炭素化経営のメリットもテーブルにのせて議論すべきです。
例えば、脱炭素化経営に取り組むことで「優位性を確立」「採用ブランディングを強化」「エネルギーコストを削減」といったメリットです。
注意すべきは、会社がいったんグリーンウォッシュ企業(環境に配慮した製品作りやサービス提供を行っているかのように見せかける企業)と世間に認識されると自社株が暴落する、という危険性です。
ソーシャルグッドの潮流にのみ込まれず泳ぎ切るには、経済成⻑と脱炭素の実現を同時に達成しようとする強いマインドセットが必要。
ひと言でいうと…
不退転の覚悟
サスティナブル経営:持続可能な状態を実現する経営
サスティナブル経営とは、地球環境・社会・経済活動という3つの観点すべてにおいて「持続可能な状態」を実現する経営のことです。
サステナブル経営が求められる理由のひとつに、ステークホルダーからの信頼獲得が挙げられます。
近年、ステークホルダーの情報ニーズに大きな変化が現れています。
業種特性やビジネスモデルを踏まえて、社会の関心が高くリスクとなりうる課題に対して積極的に情報を公開すべき、というニーズです。
中でも非財務情報開示に対する関心が高まっています。ESG投資の増加がその背景にあります。
※ 非財務情報:企業の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー等の財務以外の情報のことで、ESG情報(環境、社会、ガバナンス)、企業の中長期の経営戦略、知的財産情報等を指します。
動きとしては…
2021年の、IFRS財団の下部組織:ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の発足。
国際基準が策定されたら、企業は包括的で質の高い情報開示を求められるようになります。
具体的には、以下のような開示基準が検討されています。
サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて—「非財務情報の開示指針研究会」中間報告 —https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211112003/20211112003-2.pdf
サステナビリティ開示基準の適用については、「相応の準備期間を考慮する予定 」(2023年4月6日現在開発中のサステナビリティ開示基準に関する今後の計画より)とありますが、近い将来義務化されることはまちがいありません。
短期的な利益のみを追求していては生き残れないという認識を社内で共有し、他社に先駆けてサスティナブル経営の枠組みを構築すべき時です。
具体的には、自社パーパスの再構築・再点検から始めるとよいと思います。
以下は、『パーパス経営&パーパスマネジメント』で示した図です。
青枠で囲んだ「社会の視点」を長期の時間軸に設定し、「企業のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」を同期させて経営戦略を練り直す、という作業からスタートします。
さらにその前段で必要なことは…
重要なステークホルダーとの対話
会議のテーブルにつくときには、「SX:サステナビリティ・トランスフォーメーション」(企業の稼ぐ力と社会のサステナビリティを両立するために、や投資家との対話の在り方を変革すること)も議題に取りあげましょう。
リスク対応力の高い人には、不確実を楽しむ力がある
シリコンバレー銀行(SVB)の破綻を受けて、グローバルな金融危機のリスクが浮上してきました。ただし、気候変動と環境に関するリスクは引き続き注視すべきリスクであり、気候変動緩和策の失敗は最大の長期リスクとされています。
短期的なリスクの影響を受けながらも長期的なリスクに適応するための準備は必要不可欠。
重要なのは、目前のリスク回避に注力しながらも、長期的なリスクを予見したレジリエンス強化へ投資することです。
本記事では…
目前のリスクの後背に広がる長期リスクに対して「感度を上げよ!」 という主旨で、3つのキーワードを取りあげました。
一方で、リスクとビジネスチャンスは表裏の関係。リスク対応力の高い人には不確実を楽しむ力がある、とも言われます。
ビジネスチャンスの一例を挙げると…
2023年4月現在、国内観光の回復や低金利、円安を受けて海外勢のホテル取得意欲が高まっていること。
日本でのホテル買収に占める外国人投資家の割合が約10年ぶりの大きさとなっています。この景況にサステナビリティを同期させてブランド化する、など様々なアイデアが浮かんできます。
ただし、アイデアには賞味期限があります。
しかも、それは驚くほど短い。
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