新入社員の皆様におかれましては、今は「知る」「慣れる」の段階だと思います。
まだ、この段階では「自分のアイデアを実現したい…」など、自分の将来には意識が向いていないことでしょう。
しかし、今後、あなたがキャリアデザインを描き、その実現に向けて歩み出すときに、この説得の技術がとても役に立ちます。
また、説得に至るプロセスを知っておくことは、営業やプランニング、プレゼンや交渉など、多くの場面で役立ちます。
今は頭の片隅に入れておくだけでよいので、説得の技術の基礎を理解しておくことを、おすすめします。
「できる人」の必須のスキルです。
本テーマは、以下の構成により、3回シリーズの記事となります。
- 1回:説得を成功に導く準備と信用の構築について
- 2回:戦略の策定・論拠の選択・感情に訴えるアプローチについて
- 3回:説得の技術のまとめ&実践例
取捨選択して、お役立てください。
こんな方に役立ちます。
- 説得の技術を知りたい
- 営業・企画など交渉場面の多い部署に配属された
- キャリアップの意識をもっている
- 同僚に差をつけたい
説得の技術とは?
「説得の技術」と聞くと、商品を売り込んだり、取引を成立させたりする場での活用を想像する人が多いと思います。
悪いイメージでは、押し売りや相手を操るテクニックなど、相手を欺く行為を思い起こす人もいるかもしれません。
今回記事にする「説得の技術」とは、こういったたぐいのものではありません。
端的に表現すると、
「なぜすべきか」について相手が納得し、行動(決断)へと導く技術
とご理解ください。
説得するためには…
異なる考え方へ相手を導く努力が必要。
その努力は、懇願したり丸め込んだりすることではなく、次の❶~❺を踏まえた努力です。
- 説得を成功に導く準備
- Step1 信用の構築
- Step2 戦略の策定
- Step3 論拠の選択
- Step4 感情に訴えるアプローチ
本記事は、上記の❶❷を解説します。
説得を成功させるために必要な準備とは?
皆さんは、説得のプロセスと聞くと、どんなイメージを抱くでしょうか?
自分の立場を強く主張した後に根拠を示し、データに基づいて説明を行い、有無を言わせず約束を交わして終了…。
言い換えれば、あきらめずに粘り、理屈を並べ、相手に自分の目的とする事や物を押しつける、といったイメージでしょうか。
しかし、このようなイメージで説得を進めても、得るものは不信感のみという結果に終わります。
大切なことは…
説得に必要な事前の準備を丁寧に、きめ細かく行うこと。
説得に長けているビジネスパーソンは、以下の①~④のプロセスで準備を進めます。
自分の主張を明確にし、焦点化します。
自分の主張をワンフレーズにまとめると、焦点化できます。
例えば…
- ユーザーフレンドリーなインターフェース『シロクマくん』の開発と発売
- 操業コスト削減を実現するワークフローシステムの導入
などです。
次に示す②③のプロセスの中で、見直しが必要な場合があります。
新たな視点や魅力的なキーワードを発見したら修正するなど、柔軟に主張(ワンフレーズ)を見直します。
ワンフレーズ化して主張を繰り返し示すと、キーフレーズとして相手の記憶に残ります。
様々な側面や視点から自分の考えを検討していきます。
- 多面:「ターゲット市場」「競合」「収益性」「マーケットシェア」「マーケティング」など、様々な側面から考える。
- 多角:「お客様の視点」「企業側の視点」「以前のプロジェクトからの視点」など、それぞれの視点から考える。
などです。
フレームワークを用いると、説得の際にピックアップする要素が明らかになります。
その他、論拠の弱点も検討します。
この点検作業で得た知識や情報が、説得時の対応に大いに役立ちます。
説得上手なビジネスパーソンは、説得を始める前に、相手の意見や関心事、考え方に関する情報を収集するために、相手や関係者と対話します。
相手や状況が許せば複数回の対話を想定します。
すでに、交渉の始まりと言えますが、対話の中で自分の主張するカテゴリーを話題にし、率直な意見を聞き出します。
※ 説得力のある人は、相手から意見を聞くだけでなく、説得に入る前にその意見を取り入れた解決策や妥協策を事前に準備しています。
説得に臨む際は、他人の意見も取り入れる、という心構えをもちます。
相手の意見に熱心に耳を傾け、相手の必要性や関心事に応じて軌道修正しようという態度で臨めば、相手も同じような態度で反応を返してくれるからです。
相手が説得者の柔軟性に気づくと、「丸め込まれるのではないか」という懸念が払しょくされます。
以上①~④のプロセスを経ますが、これらを往復しながら説得の準備を進めます。
説得を成功させるためには、このような 下地をつくる 努力が大切です。
スムーズにかつ適切に下地をつくるには、段取り力が必要。
「高い段取り力」は、「あの人はできる」と言われるビジネスパーソンの特徴のひとつです。
以下の記事で解説しています。
必要に応じて、ご活用ください。
Step1 信用を構築するための努力とは?
視点を変えると自明のことですが…、異なる意見を受け入れるかどうか判断するときに、
この人の考え方や意見は信用できるだろうか?
という疑念を、説得される側がもつのは当然の反応。説得を受け入れることは、リスクの高い行為だからです。
相手が信用度をはかる観点としては、以下の項目が挙げられます。
- 身分特質(役職などの社内の地位)
- 履行能力(実績や過去の契約の履行状況など)
- 信用歴史(これまでに構築された信用度など)
- 人脈関係(信用のある人からの紹介の有無等)
- 専門知識(専門知識や最新情報の有無等)
- 人間関係(担当との関係性)
これら中で、新人が自分の力でコントロールできるのは、専門知識と人間関係です。
例えば、新商品のアイデアを提案し、その説得を成功させたいとき…
仕様やターゲット市場、顧客、競合商品など、あらゆる関連知識を集めて分析する、などです。
前述の「多面的・多角的な点検」をご参照ください。
過去に成功した経歴があれば、説得の際、知識の信ぴょう性もいっそう高く評価されます。
ですから、今後は自分の将来を見とおして「実績の積み上げ」を心がけることが大切。
あなたが、人間関係において信用できると評価されるには…
人の意見に耳を傾け、他人の利益を最大化させるよう努力する人物と証明されることです。
ですから、人間関係を築くには時間がかかる、という覚悟も必要です。
表裏がなく誠実に対応する人、感情の起伏が少なくそつのない人、すばやく対応し経過報告をこまめにする人、聞き上手な人などは、相手から信用を得ます。
信用を得るには、これらの努力が必要。
※上記の「人間関係」の内容を強化するスキルとして パーソナル・ブランディング(自分のブランド化)があります。詳細は以下の記事をご参照ください…
信用度に関するチェックポイントは…
- これから提案する事・物(変革・戦略・商品など)に関する自分の知識について、他人はどのように評価するか。
- 相手は、提案する内容について確実性があり、安心できると評価するか。
- 相手は自分のことを、役に立ち、問題解決の協力者だと評価するか。
顧客から信用を得るためには、その資源を外に求めることも必要
最後に述べたポイントを、自問自答することで、説得力に何らかの弱点を見つけることができると思います。
留意すべき点は…
その弱点を自分一人の力で解決しようとしないこと
弱点を補完するには、実績のある先輩に検証してもらったり、協力を要請したりするする方法があります。
信用を得るための資源を、積極的に外に求めていきましょう。
そのためには、日ごろから周囲と良好な人間関係を築いておくことが大切。
よき協力者を得るためには、まずあなた自身がよき協力者になることが必要です。
上司への経過報告も忘れないようにしましょう。
新入社員の皆さんにおかれましては、今は仕事そのものよりも、周囲への気づかいに疲れる状況にあると思います。
その気づかいを、自分の将来への下地づくりという視点でとらえ直してみてはいかがでしょう。 日々のお勤め、お疲れ様です。
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