EQの提唱者、ダニエル・ゴールマンは、
優れたリーダーのコンピタンスはEQであるとし、
6つのリーダーシップスタイルを示しました。
併せて提唱したのは、
6つのリーダーシップスタイルを…
状況に応じて柔軟に使い分けることの重要性
このことについて…
彼は著作のなかで、次のように表現しています。
…重要なのは、最高の結果を出したリーダーたちは特定のスタイルにこだわらず、日により週によって6種のスタイルを使い分けていた、という点だ。つまり、リーダーシップ・スタイルは、プロゴルファーが使うゴルフクラブのようなものだと考えればよい。
『EQリーダーシップ ― 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方 -』より
「6種のスタイル」を「ゴルフクラブのよう」に使いこなすには…
「いつ、だれに、どんな状況で」といった
各スタイルの適用範囲を知ることが必要です。
そこで本記事では、
各スタイルの
特徴や注意点を解説!
こんな方に役立ちます。
■ リーダーシップの発揮を期待されている方
■ 人柄は高評価、でも業績に結びつかない方
■ やがてリーダー的な立場になる方
■ EQリーダーシップを仕事に活かしたい方
EQの4領域別リーダーに求められる資質・能力
EQリーダーシップに求められる資質・能力は、以下の4領域です。
詳細は以下のとおり…
上記の内容は…
「この点はイケてるかな」「この点は不十分かな」と自身をふり返るときに使ってください。
自己認識ができて…
自己管理・社会認識が可能になります。
そして、自己管理・社会認識ができて…
人間関係の管理が可能になる。
つまり、EQの基盤となるのは…
自己認識:自分の感情を認識すること
自己認識力があって初めてEQは機能します。
感情に流される人は、リーダーの立場にあっても…
EQリーダーにはなり得ません。
このEQの自己認識力については、
次の記事で詳細を解説しています。
必要に応じて、ご活用ください。
リーダーシップ 6種のスタイル例
❶ 前向きなリーダーシップ・スタイル
1 ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップは、古典的なスタイルです。
日本の優れたトップリーダーを思い起こす人も多いと思います。
彼らは、自ら示したビジョンを自分自身が体現する存在であろうと努力しました。
結果、社員はリーダーに対して厚い信頼を寄せるとともに、大いなる魅力を感じました。
また、信頼するリーダーが示すビジョンによって、社員はともすれば平凡で単調になりがちな日々の業務に大きな意味を付与され、同じ方向性を共有していることを理解します。
このことが現場のモチベ―ションの向上につながります。
このスタイルは、再建策を打ち出すとき、新ビジョンを示すときに有効です。
発揮上の注意点は以下のとおり…
- 「1」「2」の段階で、ビジョンについてチームのコンセンサスが得られるか否か、という自問を繰り返しながら作業を進めていくことが大切です。
メンバーの価値観から乖離したビジョンでは、その影響力に期待はもてません。短期記憶に収納されるだけです。
- リーダーに実績がない場合は、チームのメンバーはリーダーの言葉に共鳴しません。特に、社員のほうが経験や専門知識に優れている場合は、その影響力に期待はもてません。
例えば、異動によって新たなチームに配属されたばかりの時期は、他のリーダーシップ・スタイルで対応するほうが賢明です。
2 コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーは、社員のアイデンティと長期目標とを関連づける支援を行うことにより、社員のモラール(士気)を保ちます。
個に応じて職務の委任をしながら、その能力を伸ばすという方法です。
主として、個人の育成に重点が置かれるため、間接的な方法で自社の収益につなげる、というリーダーシップです。
コーチ型リーダーシップが発揮されると、社員はリーダーが自分のことを気にかけていると感じるようになり、仕事の質や仕事に対する責任感が高まります。
また、仕事へのモチベ―ションも向上します。
コーチ型リーダーシップはキャリアアップを目指す社員に対して効果を発揮します。
発揮上の注意点は以下のとおり…
- モチベーションに欠ける社員や、受け身の社員には効果を発揮しません。また、リーダーの側に社員を指導できるだけの専門知識や思いやりが備わっていない場合もうまくいきません。
- コーチ役を果たす際に、自分の考えや気持ちに振りまわされて「教える」役に変質しないようにすることが大切です。
自己認識を働かせて、自分の感情に気づき、感情が一人歩きしないように、自分の感情をコントロール下におきましょう。
※ コーチングについては、以下の記事に詳細を解説しています。
『コーチング:始める前に必要な知識5つのポイント』
『コーチング:全体モデルと各段階のサポート』
『ビジネスコーチングの進め方:導入段階』
『ビジネスコーチングの進め方:展開段階』
『ビジネスコーチングの進め方:終末段階』
『ビジネスコーチングの進め方:目的別質問ガイド』
社員に「安心」をもたらすコーチングの手法に
アクノレッジメントがあります。
コーチ型リーダー必須の会話術です。
以下の記事で詳細を解説しています。
3 関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーは、課題や目標の達成よりも、社員の感情面のニーズを重視します。
そして、社員間に友好関係を構築し、チーム力を向上させます。その結果、関係重視型リーダーのもとには、忠実な社員が育ち、チームの結束が強化されます。
チームに融和を求めたいとき、モラール(士気)を高めたいとき、意思の疎通を改善したいとき、信頼関係を修復したいときに有効です。
危機的な状況に直面した時も、この関係重視型は有効に働きます。
発揮上の注意点は以下のとおり…
- 関係性を重視するあまり低レベルの仕事を修正させる機会がなくなり、社員は平凡な成果でも容認されると思ってしまいます。
その結果、チーム内の融和が「なれ合い」に変質し、目標の達成が困難になります。他の型と併用することをおすすめします。
- キャリアップを目指す社員にとっては、建設的なアドバイスを受ける機会が少なくなることから、潜在的な不満が広がります。人材育成の点からは機能不全に陥る可能性があります。
令和のリーダーシップとして…
「共感型リーダーシップ」が注目されています。
関連記事を以下に紹介しておきます…
4 民主型リーダーシップ
民主型リーダーは、納得感のある戦略やコンセンサスの形成という最終目標を念頭に置きながら、基本的に聞き役に徹します。
そして、民主型リーダーは、社員の考えや概念を聞きたいという真摯な姿勢を見せます。
耳を傾ける姿勢を示すことで、民主型リーダーは集団のモラール(士気)を保ちます。
その結果、関係者全体に前向きなインパクトを与えることができます。
民主型リーダーシップは、コンフリクトマネジメント(対立をマネジメントすることで組織の成長をうながすように解決しようという考え方)を実現する上でも、重要なスタイルになります。
また、リーダーが進むべき方向を決めかねていて、メンバーの意見を聞きたい場合に力を発揮します。
さらに、広くフィードバックを得ながらアイデアを発掘する際に役立ちます。
発揮上の注意点は以下のとおり…
- 民主型リーダーは、話がどこに向かおうとしても共に歩む忍耐と自信がある人に向いています。意思決定のプロセスに重点を置くスタイルだからです。
また、様々なタイプの人間に共感できることも必要条件です。
- 安心してものを言える環境をつくっておかなければ、偏った意見(例えば、リーダーに都合のよい意見など)しか上がってこないようになります。
これを防ぐためには、リーダーはよいニュースに対しても、悪いニュースに対しても、オープンでなければなりません。
- リーダーが重要な決断を先延ばしにして、いつまでもコンセンサスを探っていると、組織は混乱し、方向性を見失い、仕事が遅れ、衝突が激化します。即断即決が求められる緊急時においては、このスタイルはうまくいきません。
❷ 注意を要するリーダーシップ・スタイル
1 ペースセッター型リーダーシップ
ペースセッター型リーダーは、「プレイヤー」と「マネジャー」の役割を兼任するプレイングマネジャーのスタイルを指します。
テクノロジーの分野で優秀なスキルもったプロのチームに対して有効に機能します。
また、マーケティングに通じたセールス・チームに対しても有効です。
ペースセッター型リーダーシップは、企業の起業期にも向いています。
集団のメンバー全員がとても有能で、モチベーションが高く、指導監督者をほとんど必要としない場合、ペースセッター型は成果を上げることができます。
有能なチームを与えられれば、ペースセッター型リーダーは予定前に目標を達成させることも可能です。
発揮上の注意点は以下のとおり…
- (わかっているはずだという思いから)ガイドラインを社員に明確にしない場合、社員はリーダーの意向がつかめず、強引さや不信感を感じます。
また、目標達成に固執することで、社員に対して思いやりに欠ける言動がリーダーにあらわれた場合、モラール(士気)が低下したり不協和が生じたりします。
- 結果を求めて過度にプレッシャーを社員にかけると、社員の意欲は減退し、革新的な思考力も働かなくなります。
短期的な業績は期待できますが、チーム全体の力を結集して実現する本物のパフォーマンスは継続しません。
ビジョン型や関係重視型などと併用すると効果的です。
プレイングマネジャーの仕事の進め方については
次の記事で、詳細を解説しています。
業務をデザインする意識がカギです。
2 強制型リーダーシップ
強制的リーダーシップは、危機的状況を乗り切るなど、緊急に業績を回復させなければならない場面で効果を発揮します。
無用な慣行を廃止したり、悪しき企業文化を改革したりするとき、リーダーは全権を掌握し、断行する必要に迫られます。
このような状況において、強制型リーダーシップは機能します。
強制型リーダーシップは、影響力・達成意欲・イニシアチブの3点が重視されます。
また、自己認識と感情のコントロールを働かせ、怒りや短気を抑制する必要があります。
発揮上の注意点は以下のとおり…
- 強制的リーダーシップを発揮して改革に乗り出す場合、制度や文化を対象とします。人対象に強権的な言動をしてはいけません。リーダーではなく暴君と化します。大量のリストラを断行せざるを得ない場合もありますが、あくまで経営上の課題解決であり、経営側の責任です。
社員に対する手厚い援助を改革の項目に入れることで、結果的に会社の信頼は維持されます。残った社員の感情面への影響も併せて考慮します。
- リーダーが権限を発動すべき場合とそうでない場合を見極めることができれば、強制的リーダーシップは有効に機能します。
改革へのゆるぎない姿勢を保ち、確信をもって命令を下すことが大切。
また、状況の変化を待つのではなく、自分から積極的に仕掛けていく姿勢も重要になります。
固定的なリーダー像をはがす
変化の激しい時代、リーダーは、そのスタイルを弾力的に選定し発揮することが求められます。
具体的には、その企業の事業形態や社員(従業員)の質などの条件や、その企業が置かれている状況等に応じて、様々なリーダーの型を柔軟に引き出して使えるリーダーです。
本記事は、EQの4領域別リーダーに求められる資質・能力をもとに、以下の「6種のスタイル」を解説しました。
- ビジョン型リーダーシップ
- 関係重視型リーダーシップ
- コーチ型リーダーシップ
- 民主型リーダーシップ
- ペースセッター型リーダーシップ
- 強制型リーダーシップ
リーダーシップの「引き出し」を増やすことは…
チームや組織が直面する様々な課題や変化に効果的に対応する上で、ますます重要になります。
困難に直面した時には、
ぜひ、この記事を見返してください。
おススメの関連書籍を紹介します…
EQリーダーシップを知るうえでバイブル的な本。
ぜひ、ご一読を。
米国で提唱されたEQ理論を日本で初めて紹介したのが著者の高山直先生。
日本におけるEQ理論の第一人者の著作。
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