仕事のパフォーマンスは、感情に左右されます。
気分がよければ業務は順調に進む。
しかし、感情に支配されると、仕事が手につかなくなることもあります。
とくに「怒り」の感情はマイナスの強い力が働き、冷静な判断が難しくなる。
怒りをコントロールすることは、仕事の効率を上げるための重要なビジネススキル。
立場が上になればなるほど、その重要性は高まります。
そこで、本記事では…
「怒り」の対処法を解説!
具体的には次の2つの内容を紹介します。
- 怒りをコントロールするトレーニング
- 持続するイライラを緩和する方法
簡単に内容を知りたい方は Instagramへどうぞ…
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怒りをコントロールするトレーニング
怒りの発生自体は防ぐことはできません。
しかし、私たちの脳は、怒りを理性や知性で抑える働きをしてくれます。
人間らしく生きるためにコントロールする仕組みが備わっているのです。
その仕組みを理解して、怒りをコントロールできる状態をつくる…
これが、これから紹介するトレーニングです。
怒りの感情を自己嫌悪につなげないようにする
怒りが発生するプロセスは次の図のとおり…
部下が遅刻したときの、最初の感情は「心配」。
しかし、部下に対する感情の表出は「怒り」に変わっていきます。
この場合、「部下の遅刻」によって心の平穏が失われたという「侵害」が原因。
侵害に対する防衛が「怒り」の正体です。
このように、不当や不合理、理不尽や故意などによって「自分が何かに侵害された」と感じると、当初の感情が「怒り」に変わりやすい。
怒りが湧き上がることについて、自身を責める方もいるかもしれません。
しかし、怒りの発生について自己嫌悪に陥る必要はありません。
怒りは人間の本能であり、脳の発達とともに存在してきたものです。
怒りをはじめ、不安や恐怖といった、いわゆる「情動」と呼ばれる感情が起きているときは、大脳辺縁系が活発に動くことがわかっています。
『脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ』
日経Gooday https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/16/070700034/071400003/
「大脳辺縁系」は、人間を含めた動物全般の本能的な行動や感情に関わっています。
- 不安があるから将来に備える。
- 生き残るために、怒りを発動させて敵と闘う。
…など、怒りは生命維持のために発生する感情のひとつなのです。
このような脳のメカニズムに対して、必要以上に自己嫌悪に陥る必要はありません。
大切なことは、「怒りのコントロール」を“クセ”にすることで…
パワハラにつながらないようにすること
パワハラ防止については以下の記事で、その詳細を解説しています。
カギは、対立を生まないコミュニケーション。
必要に応じて、ご参照ください。
「見つける」と「待つ」でコントロールする
まずは、心理学からのアプローチ。
たとえば…
- 部下が連絡もなく、職場に来ない。
- あなたは、不慮の事故に遭ったのではないかと「心配」になる。
- そこに部下が出勤。
- 事情を聞く前から、心は「怒り」に支配されている。
という経緯のなかで…
当初の感情を「見つける」トレーニングを積む。
当初の感情は「心配」。
自分は「部下に何かあったのではないか」と心配していた。
その初発の感情を、最初の一言で述べる。
心配したぞ。何かあったのか?
「遅刻とは何事だ!」と、怒りをぶつけず…
「心配したぞ」と口にすることで「怒り」の感情を遮断することができます。
つまり…
自分の本当の感情や思いを見つけ、素直に表現するというトレーニング
…を行う。
これを日々の習慣によって“クセ”に変えていきます。
すると、感情を揺さぶられるような出来事に対しても耐性がついていきます。
次は、脳科学からのアプローチ。
私たちの脳には、怒りを理性や知性で抑える働きがあります。
人間らしく生きるためにコントロールする仕組みが備わっているのです。
前頭葉は常に感情をコントロールする役割を果たしているのですが、実は、突発的に発生する怒りの感情には、すぐに対応できないのです。
『脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ』日経Gooday https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/16/070700034/071400003/
急には対応することはできないものの、実は「少し我慢している」と活動を始める、つまり、怒りの発生と理性の発動には時間的なズレがあるのです。
ですから「ちょっと待つ」ことが、怒りを抑える最大のポイントになるのです。
上記の引用の監修:自然科学研究機構 生理学研究所教授の柿木隆介氏は…
科学的に明確に定義することはできないのですが、前頭葉が本格的に働きはじめるまでにかかる時間は3~5秒程度と考えられます。
と述べています。そこで、
前頭葉が怒りの感情を抑制してくれるまでの間、時間稼ぎをするというトレーニング
…を行う。
怒りの感情は、ノルアドレナリンという脳内ホルモンの分泌によって引き起こされます。
このホルモンは、強いストレスを感じた時に心拍数や血圧を上げて覚醒状態にする働きがあります。
怒りのピークは約6秒間。
そこで、柿木隆介氏は「6秒待つ」という提案をしています。
「6秒間待つ」の対処法を紹介します。使いやすい対処法を選んでご活用ください。
会話中であれば…
➊ 相手の言葉の反復
相手の言葉を繰り返すことで、相手の気持ちを受け止め、自分の感情を落ち着かせることができます。
➋ 目を合わせる
相手と目を合わせて、相手の感情を読み取ることに集中。脳は相手の内面を探ろうと働きだし、怒りの反応を抑制することができます。
➌ 表情に注目する
相手の表情に注目し、相手の気持ちを推し量ることに集中。想像力を働かせることで、相手への理解が深まり、怒りが抑制されます。
そのほか、メモ帳を取り出すなど、気をそらす行為を意図的に挟むことも有効。
冷静さをとり戻すことができます。
会話以外でリラックス状態に早くもどすには…
➊ 冷たいものを飲む
冷たいものを飲むことで、口の中の温度を下げることができます。
口の中の温度が下がると、脳に冷却の信号が送られて、覚醒状態からリラックス状態に移行することができます。
6秒間で、一口含んでゆっくりと飲み込むことを繰り返しましょう。
➋ 呼吸に合わせて数える
呼吸に意識を向けることで、怒りの対象から気をそらすことができます。
6秒間で、息を吸うときに「1」と数えて、息を吐くときに「2」と数えることを繰り返しましょう。
➌ 深呼吸をする
深呼吸は、副交感神経を活性化させて心拍数や血圧を下げる効果があります。
6秒間で、ゆっくりと息を吸って吐くことを繰り返しましょう。
持続するイライラを緩和する方法
怒りの対象がはっきりしている場合は、双方で解決できます。
解決が困難な場合も、第三者を交えれば、その糸口が見つかりやすい。
しかし、なんとなくイライラしている。
いったい誰に向かって怒っているのかわからない怒りもあります。
その場合は、心当たりのある「誰」を分類して対処しましょう。
なぜだか「イライラする」を分類する
いちばん心当たりがあるのは「自分」に対する怒りでは?
なかでも多いのは、理想とする自分像と現実とのギャップ。
このギャップを感じると、自分に対して不満や不安、劣等感などのネガティブな感情が生まれやすい。
考えても仕方がない、とわかっていても影のようにまとわりつき、自尊心を奪っていきます。
自己嫌悪と呼ばれる状態で、イライラが続く要因になる。
イライラの要因が自己嫌悪と特定できたら、性格ではなく行動に注目しましょう。
- 性格と行動を切り離す
- 考えるより行動
- 思いつめるより、まず行動
…という対処です。
好ましい行動を習慣化すると、周囲のあなたに対する見方が変わります。
結果、自尊心をとり戻すきっかけが生まれます。
ネガティブな情報がもたらすイライラでは?
情報の収集や共有が容易になったことで、戦争や災害、事件など、不安や悲しみを引き起こすニュースにふれる機会が増えました。
メディアの報道傾向も要因のひとつ。
ネガティブなニュースを多く取り上げる報道傾向が、あなたの心を侵食しているのかもしれません。
ネガティブな情報は、ストレスの原因となるストレッサーとして心に悪影響を及ぼします。
結果、ストレスに対する耐性が低下し、感情のコントロールが難しくなる。
このような悪影響を防ぐためには…
自分ひとりで抱え込まず、外に理解者を得る方法が有効
そして、自分の感情を言葉にして理解者に話す。
すると、感情の強さや種類を把握でき、冷静さをとり戻すことができます。
ネガティブなニュースや情報を見聞きすることが多いと感じたら、吐き出す場を意図的につくりましょう。
そうすることで、感情に振り回されなくなります。
関係のない他人に怒りを向けてないか?
私たちは、怒りを「自分とは直接関係がない人」に向けやすい。
たとえば、政治資金キックバック問題…
事件の背景や原因を調べるよりも、その政治家に対する好悪で、事の善悪を判断していないでしょうか?
自分とは関係のない人に対しては、自分の好悪で善悪を判定しても、どこにも影響を及ぼさない。
そのため、悪と嫌悪が重なり、イライラへと発展しやすくなります。
この場合…
イライラは、本当にその人物に対するものなのか、冷静に考える必要があります。
そのイライラは、その人物の権力や財力、地位を利用した不当な利益に対する嫉妬からきているかもしれません。
そう気づけば、自分の怒りは自分の嫌悪が生んだ排斥にすぎないとわかります。
いずれにしろ、イライラの源を「ヒト」か「コト」か見定める必要があります。
人間の脳は、理由や理屈がわかると「納得できる」「安心できる」という冷静で知的な機能をもっています。
自分のイライラは、自分の嫌悪や執着が原因だとわかれば、冷静さをとり戻せます。
イライラ緩和の3ステップ
イライラで、「取りかかりが遅い」「やる気が出ない」といった状態が長く続く場合は、メンタルの危険信号。
まずは、楽しいと思うことや、達成感を得られることから手をつけましょう。
心のおもむくまま充分活動すると、ほかのことへのやる気も高まります。
手をつける気持ちにさえならない、といった場合は黙々と取り組める作業から。
たとえば、掃除、筋トレ、車の運転が有効です。
臨床心理士:関本文博氏によれば…
黙々と取り組める作業には感情が入りこみづらく、気持ちを整える手段として効果的です。心がフラットになれば、自分が今何をすべきかという目標と向き合いやすくなります。
『山中教授の自分を変える練習』プレジデント社より
イライラでやる気が出ない時の対処法を紹介。
そのほか、フロー状態をつくるのも有効。
以下の記事で、くわしく解説しています。
ストレスや不安が強いということであれば、以下の記事が役に立ちます。
どの職場にいる「困った人」に対するイライラの対処法は、次の記事が役に立ちます。
必要に応じて、ご活用ください。
経済的な不安がつきまとうという方は、以下の記事で紹介する「副業」を検討してはいかがでしょうか?
さて、この記事を執筆しているのは、
年の瀬も近づく12月。
平穏無事に新年を迎えるために、
怒りのコントロールを忘れずに…
よいお年をお迎えください。
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