コーチングの実際「どのようなやり取りが行われているのか」を知りたい、という声が研修会でも多く聞かれます。
そこで、実践のイメージをもてるように…
実践例を…
導入段階・展開段階・終末段階に分けて記事にしています。
今回は「終末段階の実践例」
コーチングの実践に向けて、皆さんの参考になれば幸いです。
以下の設定で、対話の例を書きます。
- A課長のもとに、新任のB係長が配属された。
- B係長は将来を期待されている人材である。
- これまでは営業の第一線で活躍してきた。
- いわゆるプレイヤーとしての経験は十分にある。
- 一方で、マネージャー(管理職)としての経験はない。
導入段階・展開段階で以下のような経過をたどっています。
❶ 同意を得てコーチングスタート
❷ B係長の仕事観及びその構造を把握
❸ B係長のテーマを選択
自分が部下に営業を任せきれない状況があり、打ち合わせ・相談等の時間が確保できない。この「状況」を改善したい。
❹ テーマの具体化・期間の設定
- 案件を担当する部下に、提案フェーズからプロジェクトに参画してもらう(巻き込む)。
- 以下の3点を実施し、部下に任せられる状況を生み出す。
- 大切な顧客への対応に関する部下への教育・指導
- 判断基準や考え方、ナレッジなど、マネージャーとしての自分の思考ロジックを再現性がある方法で組織内で共有
- 組織のコンディションや現在地を測定・分析・共有
❺ 期間経過後、成果確認
❻ 課題の確認
❼ アイデアのすり合わせ
- 業務プロセスの現状整理など、原点回帰した状況把握
- 業務を見える化できるグループウェアの活用
- ミドルリーダーの育成と、責任の分散
❽ ロードマップの確立
詳細は、以下の記事を参照ください。
このような、経過をたどり最終段階を迎えます。
コーチングセッション ー最終段階ー
❶ セッション1 ―成果と課題の確認―
① 年度末が近づき、自己評価をとおして成果と課題を点検する場面です。
係長1年目が終わろうとしているが、これまでをふり返って、自己評価がどのように変わったか話してくれないか。
一番の課題に挙げた「マネージャーの適性」が一歩前進したと思いますが、マネージャーとしての適性を高めようと努力すればするほど、課題も見えてきました。
それは、成果・目標の達成と効率性をマイナス評価したことと関係があるかな? 関連があるのなら、説明してくれないか。
関連があります。
まず、目標設定の甘さを痛感しました。
私自身を対象に目標設定をしていましたが、今は、部署の業績評価がそのまま私自身の評価だと考えるようになりました。
効率性のマイナス評価も同じです。
組織の効率性を対象に評価するべきでした。
今後は、組織の効率性を上げるために「ヒトモノカネ」+「情報」についてマネジメントを進めていきます。
これら経営資源の運用・活用の設計図を当初に描いていなかったことが、後々まで組織に悪い影響を及ぼしました。
このことが、一番の反省点です。
君が「見えてきた」と言った課題が、今話してくれたことなんだね。
「職場の人間関係」「スキルアップ」が伸びたのは、何を変えたからか、話してくれないか。
営業を部下に任せられる状況をつくりました。
部下と話す時間を設けたことで、人間関係が深まりました。
まだ勉強中ですが、部下との人間関係の構築という点において、実践をとおしてスキルが向上したと感じています。
課題がはっきりしなかった時と、見えてきた今を比べると、何が違うかな?
新たなやりがいが生まれたことです。
❷ セッション2 ―次年度への展開―
次年度の方向性へと導く場面です。
A課長は、以下の❶→➎の質問をとおして、最終段階におけるコーチングを進めました。
- 1年間を総括していきたいと思うが、まずテーマ設定についてふり返ると、どんな気づきがあったか、思うところを話してくれないか?
- 実践に向けて、どんな努力を積み重ねてきたか、整理して話してくれないか?
- 実践の中で、様々な課題も生まれたと思うが、どのようにして乗り越えてきたか、説明をしてくれないか?
- 前回の面談の中で明らかにできた成果と課題を整理して話してくれないか?
- 次年度の抱負を話してくれないか?
これまでのプロセスをPDCAサイクルに整理すると、以下のようになります。
イメージをつかむために、ご活用ください。
コーチングの終末のポイントは 定着・標準化 させるための働きかけ
3回にわたり実践例を記事にしましたが、最終段階のポイントは、以下のとおりです。
- 成果と課題を整理する中で、対象者の気づきを言語化させる
- 自己評価の項目間の関連を観点に問いをつくる
- 獲得したナレッジを明確にさせる
- 次年度に向けて、目標化を促す
最終段階の目標は、まず本年度の成果を定着・標準化すること。
成果が積み上がるようにサポートしてください。
そして、本人の気づきを活かして次年度の方向性へと導くとよいと思います。
次回は、コーチングにおける「質問力」をテーマに記事を書きます。
読者の皆様におかれましては、くれぐれも健康に留意され、無理をなさらず人材育成にあたってください。
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